第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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さてと____赤髪の隊長は独り言ち、スウッと息を吸った。 そして。 『よく聞けっ! これから全員、雲の位置まで上昇する! そこから黄泉まで移動は一瞬! 瞬き一つで到着だ! へへっ! お前ら驚くぞ! 向こうの住人は地球人だけじゃねぇからな! 色んな星の奴がいる! 数だってハンパじゃねぇ! 視た目もそれぞれ! 誰がどうとか過去がどうとか一切関係ねぇ! 黄泉じゃみんなが対等だ! いいか! お前らはもう悪霊じゃねぇ! アタシの部下だ! 黄泉の国所属特殊部隊、バッドアップルの隊員だ! 誇りを持て!!』 オォォォォォォォォッ!!! 野太い豪声が響き渡り、みんなの目に力が漲る。 ああ、この目だ、この目をもう一度視たいと思って僕は____ ブワッ!! 足元から風が吹き上がった。 同時、朋さんと、みんなの霊体(からだ)が浮上する。 『ガハハハハー! んじゃーまたなー!』 朋さんの笑い声だ。 その声尻に重なるように、 『 俺、瞬間移動3日で覚えるからー! またなー!』 『岡村ー! 銃、楽しみにしてろよー!!』 『えぇっとーーー! 次は囲碁をしましょう、はいぃぃぃ!』 『パン旨かったーーー! ありがとなーーー!!』 『岡村ーー! また癒してくれーーー!!』 『いいかーー! 自分の弱点を喋るんじゃないぞー!!』 『岡村ー!!』 『おかむらぁぁ!!』 男達の声が優しい雨のように降ってきたんだ。 「またねぇぇぇ!! みんな頑張ってねぇぇぇ!!」 僕も負けじと大声出して、ブンブン手を振っていた。 ああ……声が遠くなる……涙がこみ上げ視界が歪む…… 『……だん……だんだん……』 『だんだん……だんだん……』 『岡村……だんだん……だんだん……』 『だんだん……岡村……だんだん……』 『だんだん……だん……だんだん……』 だんだん……? なんだろ、どういう意味……? 「みんなっ! それなに……!?」 答えが降ってくる前に、空がカッと赤く光った。 目を細め視上げた先の高い位置。 そこには大きな火球が浮かんでいた。 あれは……朋さんが来た時の火球だ。 最初に視たのより随分と大きい。 ああそうか、あの中にみんながいるんだ。 それで、あの火球がみんなを、黄泉の国へ________ ________ブンッ、 電子機器の起動音、 それに似た音がして、 その瞬間、 火球は跡形もなく消えた。
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