第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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アパートに帰ったら大福に”ちゅるー”と、そうそう鳥のささ身を茹でてあげよう。 それから、おくりびのみんなに修行のコトたくさん話して、そうだ、ネクロマンサーさんと大和さんにもお礼をしなくちゃ。 ふふ、結構忙しいな。 さてと。 (おさ)を倒し、みんなを黄泉の国へと送り出し、あとは……帰るだけ。 修行は家に帰るまでが修行だからね。 気は抜かないぞ。 僕は立ち上がり帰り支度を始めようとした。 んが、しかし、平成生まれのこの僕は、昭和(初期)コンビの恐ろしさをまだ分かっていなかった。 『あれ? 岡村君、もう休憩終わり(・・・・・)? いやぁ、さすがだねぇ! 体力、気力共に充分だ! ねえ、ショウちゃん!』 ぱぁぁぁぁぁぁ! 若者姿の先代は輝く笑顔を僕に向ける。 『うん、平ちゃん! 岡村さんは大したものだよ! さすがは30才の少年だ、これは年寄りも負けてられないね!』 ぴかぁぁぁぁぁ! 御年生きていれば80才(80から視たら30は少年らしい)。 視た目は二十歳(はたち)の瀬山さんも眩しい笑顔を僕に向けた。 ん? ん? ん? んーーー? 「えっと……先代? 瀬山さん? んーと、あの、”休憩”って……?」 恐る恐る聞いてみる。 や、え、まさか。 『ん? ほら、最初の予定とちょっぴり変わっちゃったけど、ここまでは総合戦闘訓練。休憩を挟んで次の修行に入るんだよ。んもーあたりまえじゃなーい♪』 先代!? おぁ!? ちょ、まって、え? 『平ちゃんの言った通り。この後は霊術体術の技術向上訓練……と言いたいトコだけど、先に野営の仕方を覚えようか。我々は食べなくても大丈夫だけど岡村さんは生者だからね、食べないと弱ってしまう。幸いココは山の中。食べられる物、そうでない物の見分け方を教えてあげるっ♪』 瀬山さん!? うぁ? へ? えぇ!? ウソだろ……? いや、だって、(おさ)倒したのほんの少し前よ? それだってあの”瀬山の霊能軍団”を持ってしても、あんだけ大変だったのに? 僕にしてみりゃ死闘だよ? これで終わりじゃないの? え? え? えーーーーーーーーーーーーーーーーーー!? 「せ、先代? 瀬山さん? じょ、冗談デショ? さっきの戦い、アレで修行は終わりじゃないの?」 恐る恐る聞いてみる。 この2人、僕を驚かそうとしてるんだ、だって、あんなハードだったもん! 『岡村君こそナニ言ってるの、せっかくショウちゃん来てくれてるのに勿体ないでしょぉぉぉ! まだやるよ! 続くよ!』 フンガー! な先代と、 『そうだよぉ。また現世(こっち)に来たいなぁと思うけど、毎週という訳にはいかないからね。私が来た時は出来るだけの事を教えたいの!』 ピカー! な瀬山さん。 2人は目をキラキラさせて、声を揃えてこう言った。 『『ふふふ、ごめんね。 我々昭和生まれの人間は、無理してナンボの根性論者!  若いキミには悪いけど、年寄りのやり方に合わせてちょうだーーい!!』』 『にゃっにゃーーーーー!!』←大福も昭和生まれ。 あっひゃーーー!! マジか……マジなのか……うぅ……こうなったら腹を括るしかないっ!! 「わかりました! 受けて立ちます! とことん僕を鍛えてください! あ、でも、その前にお腹空いた。さっき言ってた野営の方法、食べられる物探しに行きましょ!」 れっつごーーーー!! かくして僕達は走り出す。 ああ、風が気持ちいい。 視上げれば雲の切れ間、そこから光が漏れ落ちて天使のはしごが掛けられる。 大地を視れば百色華(ひゃくしょくか)は満開で、虹色の絨毯が果ての果てまで広がっていた。 霊媒師 瀬山 彰司__了
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