第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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スゴイ……黄泉の国(ここ)はまるでおとぎの国だ。 こんな世界があるなんて知らなかったよ……視てて飽きない、色んなヒトがいる、みんなキレイな服を着て楽しそうに笑ってる。 きっと旨いものも食べてるんだろうな。 母ちゃんと空……今頃何してるんだろ、元気でやってるかな。 あ……あのヒトが着てる服、母ちゃんに似合いそうだ。 あっちの人はソフトクリーム食べてる、空にも食べさせたいなぁ。 特殊部隊って……給料いくらなんだろ? 稼いだ金、現世に送れないのかな。 『……イ……オイ……オイ、ランナー、聞いてるか?』 はっ! ボスが俺を呼んでる! 『な、なに?』 慌てて返事をすると、ボスもみんなも揃って俺に注目してた。 や、やばい。 ちょっと夢中になりすぎた。 話を聞いてなかったって怒られるかな、喰われるかな……いや、それは大丈夫、ボスは俺らを喰ったりしない。 『なんだ、ビックリしたのか?』 そう言って俺を視るボスは……笑っていた。 あ……怒らないんだな……(おさ)なら絶対怒るのに。 『あ……と、うん、ビックリした。だってさ、だってさ、山とぜんぜん違うから』 俺がそう答えると、中村さんも杉野っちも他のみんなも何度も頷いて、目をパチパチしてたんだ。 隙あらばキョロキョロしてさ、俺達は完全におのぼりさんになっていた。 そんな俺らにボスはニヤリとして言ったんだ。 『山と違うか、ははっ! そうかもな。だが驚くのはまだ早い。黄泉の国(ここ)はなんでもある、なんでも手に入る。視てみろ、たくさん店が並んでるだろ? 服屋に靴屋、アクセサリーにレストラン、どこに行っても金はいらない。すべてタダなんだ』 『『『『『『『 えぇっ!!!』』』』』』』 街中で、ヒトの目があるっていうのに俺達は大きな声をだしてしまった。 タダ……? 店で売ってるものがタダ? そんなコトある訳ないじゃん! 『あの……ボス。あんまり我々をからかわないでください。何かを手に入れるには金がいる。タダで手に入るなぞあり得ない。……ああ、そうか。我々が緊張してるから冗談を言ってくれたんですね? ボスの優しさだ』 さ、さすが中村さん。 そうか、そういう事か。 俺達はからかわれたんだな……と思っていたのに。 ボスは言ったんだ。 『いや、からかってねぇよ。ここに通貨の概念はねぇ。ガチでなんでも手に入る。それが黄泉の国だ』 ……通貨の概念がない? それじゃあ、特殊部隊に給料はないのかな。 という事は……現世に仕送り出来ないのか。
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