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ほかのみんなにバレないように、俺はコッソリため息を吐いた。
だけどさ、それをボスに視られてしまったんだ。
『どうした? ため息なんかついてよ』
『え、……と、別になんでもない。ただちょっと……ああ、うん、黄泉の国ってすごいなぁって驚いただけだよ』
なんて……ごまかした。
本当の事は言えないよ。
黄泉には”金”というものがないから、特殊部隊で仕事をしても給料は出ない。
それを聞いてガッカリしたなんて言えるはずがない。
本来俺は、黄泉に来れる資格がないのに、岡村と瀬山さんと持丸さんと猫に救われた。
それでボスに拾ってもらって……そう、奇跡が起きてココにいるんだ。
まだ働いてもいないのに、着いて早々給料のコトを考えてたなんてバレたらさ、きっと怒られる、呆れられる。
もしかしたら不真面目だってクビになるかもしれない。
俺だけがクビになるならまだいい、もしこれでボスが怒って、ほかのみんなもクビなんて事になったら……だめだ、絶対に内緒だ。
そもそも……よく考えたらさ、もし給料があったとしても、黄泉の金をどうやって現世に送るんだ。
霊力がなければ金は視えない、視えない金は使えない。
ボスは俺の答えを聞いて少しだけヘンな顔をした。
もしかして……なにか気付かれちゃったのかな、ダイジョブかな、ちょっと胸がドキドキする。
『ふぅん、驚いただけなら良いんだけどよ。まぁなんだ。もし、なにか思うコトがあるなら遠慮なく言え。なんたってアタシらは、この先最低でも百年は一緒にいるんだからよ。腹割って行こうぜ、そんでよ、』
それはボスの話の途中だった。
突然、戸惑うようなみんなの声とたくさんの高い声が聞こえてきたんだ。
____あっらーーーっ! イイオトコがこんなにいっぱい!
____アンタ達、全員地球人デショ!
____なに? なになに? 照れてるの? カワイイじゃない!
____んもっ! オドオドしちゃって!
____もしかして黄泉に来たばかり?
____だったらイロイロ教えてあげるわぁ!
____これから一緒に食事して……それでその後、
____ムードの良い所でボクシングなんてどうかしら……?
振り向いて、みんなの方を視てみれば……えぇぇっ!?
イチ、ニィ、サン、シイ、ゴ、5頭のカンガルーに絡まれてるトコだった。
『ボボボボス! カンガル、カンガルがいる! あのカンガルー達も宇宙人なのか? あ、でも日本語喋ってる、てことは地球人? いや日本人? いやいやカンガルだし! え? え? えー!?』
なにがなんだかわかんない!
カンガルー達は揃ってオシャレな服を着て、帽子やリボンで着飾っている。
腕も胸も筋肉がスゴイけど、日本語喋るしニコニコしてるし、動物園にいるカンガルーとは別のような気がしてならない。
というか、みんなを食事に誘ってる!
カンガルーってああ視えて草食だっけ?
って、そんなの今はどうでもいっか!
『あいつらどうやら、カンガル族のオネエサマ方に気に入られたみたいだな。どうすっか、助けに行くか、いやでも、んぷっ! オモシロイから放っておくか。眺めててもいいんだけど……んぷぷ! カンガル族はモノホンの戦闘民族だからな。とりあえず今日は黄泉の初日だしトラブルは避けた方がいいだろ。しょうがね、助けに行くか。ランナー着いて来い』
ボスは半分笑いながら、助けに行くぞと歩き出した。
俺もその後を追う。
カンガル族? 戦闘民族? やっぱり宇宙人なのか……!
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