第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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◆ 街を歩いて10分もしないうち、俺達は目的地に着いた。 『はい、到着ー。おまえら全員いるかー、ココが【黄泉の国入出国センター】だー、これから入国手続きするからなー、全員終わるまでアタシもいるから安心しとけー』 な……なんだココ……すっごく大きな建物だ。 それに形も変わってる、卵みたいに丸っこい。 出入り口もその分デカくて、ボスが言うにはいろんな星から死者が来るから、霊体(からだ)が大きな(ヒト)でも入れるようにしてるんだって。 それにしたってデカすぎだ。 建物の中に入ると、そこも色んなヒト達で溢れかえっていた。 霊体(からだ)がブリキで出来たヒト、宙で泳ぐ白イルカ、ピンクの毛皮のオオカミに、言葉を話すスポーツカー(人は乗ってない)、視れば視るほど色んなヒト達がいる。 すごいな……俺はさ、山の中が世界のすべてだと思ってた。 おっかない(おさ)がいて、その(おさ)に魂を握られて、世界は怖い所、楽しい事なんて何もないって思ってた。 だけど黄泉の国(ここ)はまるで違う。 視るものすべてが新しい。 大きな街、大きな建物、ズラッと並ぶキレイな店。 ココもそうだ。 真っ白なキレイな建物……こんなの山にはなかったよ。 俺のいた世界は狭かったんだな……黄泉にあって山にもある、なんてモノはひとつもない。 …… …………ん?  あれ……? あれ……?  あれって……もしかして……あーーーーっ!  黄泉にあって山にもあるモノ発見っ! 窓んトコに飾られているあの花! あれは山にもあった! 時間で色を変える花! 確か名前は百色華(ひゃくしょくか)、瀬山さんが構築した花だ! わーー! すごい! すごい! おんなじ花!  こんな所で視れるなんてすっげー嬉しーーー! 花! もっと近くで視たーーーい!  タタタッ!  ちょっとだけ、そう思って走り出したその直後、俺はボスに捕まった。 『ランナー、おまえは子供か? これから手続きだろうが。勝手にどっか行こうとすんな。ナニを視つけたんだか知らんけど、先にコッチだ』 そう言ったボスは容赦がない。 俺をズルズル引きずって、そのままエレベーターに乗り込んだ。 みんなも後から着いてきて、それで、俺を視て笑うんだ。 んもーなんだよ!  笑ってないで助けてくれよ! 俺はガンガン文句を言った。 けどさ、みんなもボスも『オマエがワルイ』と口を揃えて笑ってるんだ。 なんだよー! なんだよなんだよなんだよー! …… ………… ………………本当に、なんだよ。 道行く人がニコニコ笑う、みんなも笑う、ボスも笑う、俺も笑った。 楽しい____と思ってしまう。 本当は思っちゃ駄目なのに。 罪人なんだ、俺は、俺達は悪い事をしてきたんだ。 だから駄目だ、心から楽しいと思っちゃ駄目なんだ。
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