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ギュイィィン!!
悪鬼のごとく____否、まさに悪鬼そのものといった形相で、エンジン全開のチェーンソーを僕に向かって構えているのだ!
えーーーーーっ!!
ちょっと!!
それどこから出したのーーーー!?
ゲームのキャラが手ぶらに見えて、いろんな銃器装備してんのと同じノリですかーーー!?
それになんでチェーンソー!?って、
ああ!!
あれか!!
お父さんの作業着、背中に”藤田林業”って書いてあったーーーー!
それだ!!
生前は林業かっ!!
だからチェーンソー!!
ムリ!! ムリムリムリ!
チェーンソーなんかで切り付けられたら死んじゃうよ!!
あ!! でも、霊が持ってるチェーンソーだよ?
生者の僕には無効なんじゃないの?
いやいやいやいや!! やっぱりダメだって!!
僕の霊力は霊体を物体として捉える程だって言われてるんだ!!
実際普通にさわれるし!!
って事は、霊の持ってるアイテムも僕には有効、すなわち、あのチェーンソーで切られたら僕は死ぬ!!
お父さん!!
さっき確かに”死刑”って言ってたけど、もう執行ですか!?
早くないですか!?
僕の話を聞いてくださいってーーーー!!
悪鬼は脇を締め、チェーンソー本体を自身の腹筋に押し当てた。
爆音を奏でつつ激しい振動を続ける刃先が完全に僕をロックオン。
ああ、猫……猫飼いたかった。
あまりの恐怖に頭に浮かぶのは猫の事ばかり。
コローンと甘えて、警戒心の欠片もない僕の猫ちゃんは、見事な猫の開きとなって四肢をのばし腹を見せている。
そんな脳内に浮かぶあられのない姿の猫ににんまりとしていると、ダンッとお父さんが一歩前に踏み出した。
もう駄目だ……と、思っていたのに僕の視界は濃紺一色、チェーンソーを持つ悪鬼の姿が消えた。
視界を埋めるほどの濃紺色。
それが社長のデカイ背中と解ったのは数瞬後の事だった。
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