第六章 霊媒師OJT-2

106/153
前へ
/2550ページ
次へ
ギュイィィン!! 悪鬼のごとく____否、まさに悪鬼そのものといった形相で、エンジン全開のチェーンソーを僕に向かって構えているのだ! えーーーーーっ!! ちょっと!! それどこから出したのーーーー!? ゲームのキャラが手ぶらに見えて、いろんな銃器装備してんのと同じノリですかーーー!? それになんでチェーンソー!?って、 ああ!! あれか!! お父さんの作業着、背中に”藤田林業”って書いてあったーーーー! それだ!! 生前は林業かっ!! だからチェーンソー!! ムリ!! ムリムリムリ! チェーンソーなんかで切り付けられたら死んじゃうよ!! あ!! でも、霊が持ってるチェーンソーだよ? 生者の僕には無効なんじゃないの? いやいやいやいや!! やっぱりダメだって!! 僕の霊力は霊体を物体として捉える程だって言われてるんだ!! 実際普通にさわれるし!! って事は、霊の持ってるアイテムも僕には有効、すなわち、あのチェーンソーで切られたら僕は死ぬ!! お父さん!! さっき確かに”死刑”って言ってたけど、もう執行ですか!? 早くないですか!? 僕の話を聞いてくださいってーーーー!! 悪鬼は脇を締め、チェーンソー本体を自身の腹筋に押し当てた。 爆音を奏でつつ激しい振動を続ける刃先が完全に僕をロックオン。 ああ、猫……猫飼いたかった。 あまりの恐怖に頭に浮かぶのは猫の事ばかり。 コローンと甘えて、警戒心の欠片もない僕の猫ちゃんは、見事な猫の開きとなって四肢をのばし腹を見せている。 そんな脳内に浮かぶあられのない姿の猫ににんまりとしていると、ダンッとお父さんが一歩前に踏み出した。 もう駄目だ……と、思っていたのに僕の視界は濃紺一色、チェーンソーを持つ悪鬼の姿が消えた。 視界を埋めるほどの濃紺色。 それが社長のデカイ背中と解ったのは数瞬後の事だった。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2369人が本棚に入れています
本棚に追加