第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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(わり)いな、今日は人数多いんだ。全部で27人、しかも全員特殊ルートだ。手続き大変だろうけど、ま、ヨロシク頼むわ! おーい、お前ら集合ー! いまからココにいるぐっさんが手続きしてくれるから一列に並べー』 学校の先生みたいだ。 ボスは手をあげ、俺らを順に並ばせた。 その横でぐっさんは(ボスがそう呼んでた)、パチンと指をひとつ鳴らして、……えっ!! 鳴ったと同時に大きな机が現れた! 今の……構築か? でもさ、印も何も結んでない! なのに机が出てきた! 俺もみんなもザワザワしだす、もしかして……ぐっさんも霊媒師なのか? 唖然とする俺らの前で、パチン、パチンと27回指を鳴らし、それと同時に椅子がどんどん増えていく。 ぐっさんは数を数えて、みんなの椅子が揃ったのを確かめるとこう言った。 『順番に手続きするから座って待ってな。あ、私はアンタ達を担当する”ぐっさん”、ヨロシクね。ちなみに”ぐっさん”は本名じゃないから。朋美が付けたあだ名だから。本名で自己紹介しようとしても、毎回朋美が邪魔するから。もう面倒だからアンタ達も”ぐっさん”って呼んで』 手をヒラヒラさせながら半笑いのぐっさんは、可愛らしい(ひと)だった。 背はそんなに高くない。 ボスと並ぶと子供みたいだ。 明るめの茶色い髪はショートでサラサラ。 大きな目、小さな鼻、ほっぺはツルツルのもちもちで、年は多分俺と同じか少し上。 薄紫のワンピースがよく似合っていた。 黙っているとお嬢さんっぽく視えるのに、喋り出すとまるでボスにそっくりだった。 『そんじゃあ、1番目に並んでるポニテの兄さんからいこかー。んあ? 緊張してんの? だぁいじょうぶ! 取って喰ったりしないから! え? ちょっとなに? ”喰ったり”に過剰反応してるんだけど。もしかしてNGワード? あははは、メンゴメンゴ!』 中村さんは借りてきた猫状態、緊張というよりポカンとしてる。 『はい次2番目。白髪もじゃもじゃ綿あめ兄さん、……え、やだどうしよう、なんだか綿あめ食べたくなってきた』 綿あめ言われた森木さんは、なんでか嬉しそうに照れていた。 で、ぐっさんは手続きしながら指を鳴らすと綿あめ2つを出現させて、1つは自分、もう1つを森木さんに渡してた。 『はい次3番目、……って、すげーな。よく視りゃ全員、野郎じゃん。なんだよ朋美、逆ハーか? レンジャー逆ハー計画か? おぉっと兄さん、手に何持ってんだ? チャカか? しかも二丁、デザートイーグル。いいねぇ! 物騒だ! アンタ私のタイプだよ。はい次ー』 ぶはっ! あ、大上さんが吹き出した。 肩がプルプルしちゃってる、あーもー、俺も我慢してたのに。 ぐっさんは淡々と、真面目な顔で不真面目なコトを言う。 それがなんだかおかしくて、徐々にみんなの緊張がとけたんだ。 手続きだからモロに笑うのはナシだけど、それでも空気は軽くなる。 ボスは壁に寄りかかり腕を組んで笑ってて、それもあってか、手続きは順調に進んで、全員無事に終えたんだ。 『ヨシ! これで全員手続き終わったぁ! ぐっさん、サンキュ! 相変わらず仕事早いなっ!』 ボスは首をコキコキ鳴らし、伸びをしながらそう言った。 ぐっさんは笑いながら、 『そりゃ早いよ。だって黄泉での暮らし方とか、そういう講習が今回ないからな。それ、朋美が教えてやるんだろ?』 言いながら指を鳴らして、人数分のコーヒーを出してくれた。
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