第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『誰にも時間は戻せない。犯した罪は決して消えない。だから抱えて生きるしかない、って死んでるけど。……そう、私らは死んでるんだよね。命は有限、魂はほぼ無限。滅されない限り、魂は存在し続けるんだ。アンタらさ、気が遠くなるよな時間、ずーーーーっと俯いてるの? 楽しい事、嬉しい事、朋美の優しさ、そういうの避け続けるの? それって楽しい? ああ、分かってる。楽しんじゃイケナイって思ってるんだよな。でもさ、それじゃあ続かないよ? 俯いてられるのはせいぜい最初の百年だ。それ以降は辛くなる。疲れ果てて何もかもが嫌になる。そういう奴は大抵自分で自分を滅するんだ』 ぐっさんはチョコをポイポイ口に放り、目を真っ赤にさせている。 鼻をズルズルすすりながら、それでも力強く声を上げた。 『そんなの間違ってる、罪を悔いて償うなら途中で投げ出すな! 責任持って永遠に償え! 出来る事を挫けないでし続ける、その為には自分を大事にしないと駄目なんだ。少しくらい楽しい時間があってもいいじゃない、朋美の、誰かの優しさをありがたく受け取ったっていいじゃない。そうじゃなければ、自分を追い詰めるほど罪を悔いてるアンタ達がかわいそうだ……! …………ああムカつく! うまく言えない! わぁぁぁぁん!』   最後はわんわん泣き出して、ボスはそんなぐっさんをギュウっと強く抱きしめた。 俺達は……どうしていいか分からずにいた。 だけどさ、今目の前でぐっさんが泣いている。 しゃくりあげて、悲しそうに涙を流している。 これは……俺達のせい……なのか? 俺達が泣かした……? それとも……俺達の為に泣いてくれてるのか……? ボスはぐっさんを抱きしめながら、静かに話しだした。 『ぐっさんの旦那も元悪霊だからな。重なっちゃったんだろうよ。あのな、お前らの気持ちも分かる。悔いてるんだよな。だからこそ自分に厳しくしようとするんだよな。でもよ、ぐっさんの言う通りだ。今のままじゃ、せいぜい持って百年だ。それでいいのか? 百年きっちり働いて、その間ずっと俯いて、ボロボロになって嫌になって自分で自分を滅するのか? そうなったらよ、エイミーが泣くぜ? それでいいのか?』 岡村が泣く……? それは嫌だ……! 想像だけで辛くなる、岡村を悲しませるなんてしたくない。 俺達の罪悪感は、俺達だけの問題じゃあないのかもしれない。
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