2366人が本棚に入れています
本棚に追加
『我々の手続きをしていただいて、ありがとうございました。それから……すみませんでした』
あれからぐっさんは、広い部屋でひっくり返って大泣きした。
それを視た俺達はすっごく焦り、それで代表して中村さんが謝ったんだ。
見送りのドアの前、鼻を真っ赤にしたぐっさんは、残りのチョコも食べつくし、恥ずかしそうに笑っていた。
『いや……あはは、私こそごめん。飲んでもないのに熱くなっちゃった。
あのね、アンタ達は知らないだろうけど黄泉の入国審査って厳しいんだ。元悪霊が入国を許されるって滅多にない。今回は朋美の推薦があって、そこから審査が入って、罪を犯した経緯、アンタ達の今の魂、そういうの全部視られて、その上で許されたんだよ』
そんなに厳しいものなのか……よく許可が出たと思う。
ボス、俺達になにも言わないけど……大変だったんじゃないのかな。
俺達は黙ったまんま顔を見合わせた。
言葉にわざわざしなくても山でずっと一緒だったんだ、目を視れば同じ事を考えてるのが分かる。
『とにかく、もう少し自分を大事にしてよ。アンタらが今こうやって黄泉にいるのは、アンタらの為に一生懸命になってくれた奴らのおかげだろ? そういう奴らを悲しませるような事をしないでよ。頼むからさ、』
そう言ってぐっさんは笑ったけど、少しだけ淋しそうだった。
ボスはそんなぐっさんの肩を軽く叩く、そして、
『悪い、色々思い出させちゃったな。ぐっさん、ありがとな。これからもコイツらと仲良くしてやってよ』
困ったように、だけど優しい顔で頭を下げた。
ボス、まただ。
さっきもカンガル族に言ってたよ。
俺らと仲良くしてやってって。
ぐっさんが手を振って、大きな扉が静かに閉まる。
俺達はエレベーターに乗り込んで1階に降り立った。
するとロビーが騒がしい。
なんだろうと視てみると……えっ! パンダ!?
しかもデカイなんてモンじゃない!
俺もみんなも釘付けになった。
巨大なパンダは白黒模様でふわっふわ。
あまりの可愛さに霊だかりが出来ていて、パンダはキャーキャー言われていた。
パンダなんて俺……小学生の頃に動物園で見たのが最後だ。
あの時のパンダと視た目はまったく一緒、ただデカイ、視上げた首が痛くなる、そうだな……二階建ての家くらいはあるんじゃないか……?
あっ、そっか!
この建物の大きな出入口、あれはパンダの為なんだ!
最初のコメントを投稿しよう!