第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『我々の手続きをしていただいて、ありがとうございました。それから……すみませんでした』 あれからぐっさんは、広い部屋でひっくり返って大泣きした。 それを視た俺達はすっごく焦り、それで代表して中村さんが謝ったんだ。 見送りのドアの前、鼻を真っ赤にしたぐっさんは、残りのチョコも食べつくし、恥ずかしそうに笑っていた。 『いや……あはは、私こそごめん。飲んでもないのに熱くなっちゃった。 あのね、アンタ達は知らないだろうけど黄泉の入国審査って厳しいんだ。元悪霊が入国を許されるって滅多にない。今回は朋美の推薦があって、そこから審査が入って、罪を犯した経緯、アンタ達の今の魂、そういうの全部視られて、その上で許されたんだよ』 そんなに厳しいものなのか……よく許可が出たと思う。 ボス、俺達になにも言わないけど……大変だったんじゃないのかな。 俺達は黙ったまんま顔を見合わせた。 言葉にわざわざしなくても山でずっと一緒だったんだ、目を視れば同じ事を考えてるのが分かる。 『とにかく、もう少し自分を大事にしてよ。アンタらが今こうやって黄泉にいるのは、アンタらの為に一生懸命になってくれた奴らのおかげだろ? そういう奴らを悲しませるような事をしないでよ。頼むからさ、』 そう言ってぐっさんは笑ったけど、少しだけ淋しそうだった。 ボスはそんなぐっさんの肩を軽く叩く、そして、 『(わり)い、色々思い出させちゃったな。ぐっさん、ありがとな。これからもコイツらと仲良くしてやってよ』 困ったように、だけど優しい顔で頭を下げた。 ボス、まただ。 さっきもカンガル族に言ってたよ。 俺らと仲良くしてやってって。 ぐっさんが手を振って、大きな扉が静かに閉まる。 俺達はエレベーターに乗り込んで1階に降り立った。 するとロビーが騒がしい。 なんだろうと視てみると……えっ! パンダ!? しかもデカイなんてモンじゃない! 俺もみんなも釘付けになった。 巨大なパンダは白黒模様でふわっふわ。 あまりの可愛さに(ひと)だかりが出来ていて、パンダはキャーキャー言われていた。 パンダなんて俺……小学生の頃に動物園で見たのが最後だ。 あの時のパンダと視た目はまったく一緒、ただデカイ、視上げた首が痛くなる、そうだな……二階建ての家くらいはあるんじゃないか……? あっ、そっか! この建物の大きな出入口、あれはパンダの為なんだ!
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