第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『バラカス!』 巨大なパンダにボスが大きく手を振った。 パンダも『キュゥン!』と返事を返す(パンダの鳴き声初めて聞いた)。 という事は知り合いなのか。 ボスとパンダはなにやら話をしてるんだけど、パンダは ”キュゥキュゥ” しか言わないし、話の内容は分からない、でも可愛い。 『ああそうだ。コイツらアタシの部下なんだ』 『キュゥン? キュ! キューン?』 『もちろん! ハンパねぇ強者共だ。視てなバラカス、コイツらは化けるぜ?   アタシら部隊がエースになるのに2年もかからねぇよ』 『キュキュキュキュ……キュルン!』 『ガハハハハ! もう知ってるのか! そうだ、アンタと一緒だよ。だが今は違う。それもアンタと一緒だ』 さ、さっぱり分からない。 パンダは何を話しているんだろ? ボスは分かるみたいだけど、よく”キュゥキュゥ”だけで通じるな。 『近いうちにコイツら連れて挨拶に行くからさ。あ、どうせならマジョリカがいる時がいいな。久しぶりに飲みてぇし。んあ? そりゃそうだ! オッサンの顔視ながら飲む酒より、カワイイ子視ながらの方がウマイに決まってるだろ。当たり前のコト聞くなよな、これだから素人は。あはは、うん、ありがとう。コイツらに色々教えてやってくれ。男同士、仲良くしてやってくれ』 あ……また……まただ。 俺らと仲良くしてくれって、パンダにも言っている。 まさかボスは、これから会う(ひと)、会う(ひと)、みんなに俺らの事を言うのかな。 …… …………全然違う、 そんなのは分かっているけど、それにしたってボスと(おさ)は全然違う。 ボスは俺らを”駒”扱いしない。 大事にしてくれる、こんな俺らをだ。 岡村が悲しむの、絶対ヤダ。 瀬山さんも持丸さんも猫も、それからボスが悲しむのも……ヤダな。 俺達は元悪霊で、過去の罪を決して忘れてはいけない。 だから、すぐには変われないかもしれない。 また後ろ向きな事を考えるかもしれない。 だけど、それを心配してくれる(ひと)がいる、それを悲しんでくれる(ひと)がいる。 そういう(ひと)は大事にしたいよ。 『あのさ、中村さん、みんなも、……今日さ、やっぱり親睦会やってもらおうよ、』 思いきってみんなに聞くと、同じ事を思っていたのか次々頷いてくれたんだ。 うん、そうだよ。 罪は絶対忘れない、だけど大事な人を大事にしたい。 その為の最初の一歩、小さな一歩。 『ボス! 俺達やっぱり親睦会してほしい!』 なんだかすごく恥ずかしい。 だけど大きな声で言ってみた。 俺らのボスはガハハと笑って、 『おう!!』 力強く答えてくれたんだ。 ああ、やっぱり嬉しいなぁ…… 嬉しい……そう思っても、いいんだよな? これから少しずつ、時間をかけて変わっていけたら、 ‘’元瀬山の霊媒師‘’じゃなくて、 あたらしく、 そう____ 俺達は、バッドアップル。 今日から始まる。 このさき百年、いやもっと、ずっと、このボスと共に歩んでく。
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