第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

16/285
前へ
/2550ページ
次へ
◆ 『バラカスも来るか? 親睦会、』 誘われたが断った。 そのうち挨拶来るんだろ? コイツらだって黄泉の初日で緊張もしてるだろうし、今日くらいは身内だけでやってやれ。 知らねぇヤツがいりゃあよ、多少なりとも気を遣う。 ああそうだ、そういうもんだ。 だからな、また今度な。 さぁて、この後はどうするか。 マジョリカは夜勤明け、今頃ぐっすり寝てるだろうし、サーバーのメンテナンスは終わってる……やるコトがねぇな。 かといってこのまま帰るのもなんだしよ、…………そんじゃあ、アレだな、せっかくだから街にでも寄ってみるか。 黄泉の国入出国センター(ココ)から街まですぐそばだ。 黄泉の国には至る所に大きな街がある。 俺とマジョリカが住む地域、そこから一番近い街がここ【ミシレイニアス】だ。 建ち並ぶ巨大なビル、たくさんの洒落た店、大きな劇場、あらゆるエンターテインメントが存在する街。 この街を中心に【黄泉の国入出国センター】、【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】、【光道開通部(こうどうかいつうぶ)機械棟】、などの各機関が集中しているのもあってか、いつだって霊達でごった返してやがるんだ。 街に寄るなら…… 『この姿のままじゃマズイな、』 俺様のキュートさは、どの星の奴らにも大ウケだ。 パンダの姿で街を歩けば、あっという間に囲まれる。 ”カワイイ、カワイイ”と騒がれて、ゆっくりなんて出来やしねぇ。 まったくな……いまだにこれが()せんのだ。 生まれ育ったバンブー星じゃあ、俺は強面で通ってた。 子パンダは俺を視て泣き出すし、野郎パンダは目を逸らして回れ右。 だがその分、姫パンダにはモテモテだった。 ____悪いパンダとわかっているのに愛さずにはいられない、 なんて。 生きてた頃、姫パンダ達からこのセリフを飽きるほど聞かされた。 なのに今じゃあ、 ____きゃー! 可愛いー! ふわふわもこもこーっ! コッチ視てー! だもんなぁ。 調子が狂うぜ。 死んでから、男も女も大人も子供もみんながそう言う、飽きる程聞かされた。 つーかよ、ついさっきもセンターで聞かされたっけ。 とにかく、パンダビジュアルはダメだ。 パチン! 爪の先を軽く弾けば軽快な音が鳴る。 黄泉の国ではおなじみの、指を鳴らして霊力(ちから)を発動。 ボワン! 自分の霊体(からだ)の再構築だ。 発動までは僅かたったの0.02秒。 身長が低くなる。 たったの2メートルに縮小される。 霊体(からだ)の毛は抜け落ちて、残っているのは頭部のみ。 『ふぅ、あんまり慣れねぇ姿だけど仕方がない』 俺の姿は激変だ。 参考モデルは地球人、圏域はヨーロッパ。 銀髪碧眼、一般的には色男と呼ばれる部類。 俺はプリティパンダからヒトの姿へと変化を遂げた。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加