第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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野外の劇場までは数十メートル、ヒトの足で歩いて行っても時間なんざかからん距離だ。 着いてみればそこは(ひと)でごった返していた。 色んな星の霊達(やつら)がいるが、心なしかヒト族が多い。 使っている言語からして地球人がほぼほぼ占めている。 日本人、アメリカ人、イギリス人、人種にばらつきはあるものの……なんだこりゃあ、髪の色も目の色も違うのに、どいつもこいつも雰囲気がよく似ていた。 男も女も両方いるが、男の方が圧倒的に数が多い。 みんなこれから始まるイベントに心躍らせているようだ。 近くのヤツらの会話が聞こえる、仲は良さそうなのに言葉使いはやけに丁寧だ。 これから何が上演されるのか、それも知らずに来た俺は、情報収集を兼ね近くの男達の会話に聞き耳を立てた。 『ぬぉぉぉぉ! 吾輩、感激であります! この広い宇宙! まさか二次元の星があったとはぁぁぁぁぁっ!!』 『小生も激しく同意いたしますぞぉぉぉぉっ! これまでどうにかして小生の次元を1つ減らせないものか、減らしてアニメの世界に転生したい、そう願い続けたものの結局それは叶わなんだ……がぁ! しかぁしっ! まさかまさかの大まさか! 同じ宇宙(そら)の下! 二次元キャラの星があったとはぁぁぁっ!!』 『…………ボソボソボソ……ボソボソ……ボソーーーーーッ!!』 『宇宙はこんなにも広かっタ! 地球から遥か離れた何万光年、そこに存在してたんダ! その名もデジタル星!』 『……サンタマリアのお導き……深く感謝申し上げます……』 …… …………なんだコイツら……何を言ってるのかよく分からねぇ。 とりあえず……デジタル星の誰かがイベントに出演するってコトみてぇだな。 まぁ、劇場で上演されるのは演劇か歌か手品か……そのうちのどれかだろう。 それだけ分かればもういいと思ったが、なんたってコイツらの声はデカくて、嫌でも色々聞こえてくる。 『今日はいつもに増してテンションアゲアゲでいきますぞ! なんたってライブは3人組みアイドルグループ【A・G・L】! デジタル星の3つの民族の代表する美少女達ですからな! 千年に一度生まれるかどうかの美少女……はぅ……デュフフフ……』 『あひょーん!! ピンクバンダー氏! 顔! 顔! 今のニヤケ顔は犯罪ですぞ! 黄泉の国初のタイーホ者になったらどうするでありますか!』 『……ボソボソ……ボソ……ソシタラ……ムカエニ……イク……』 ピンクバンダー氏と呼ばれた野郎はなるほど、頭にピンクのバンダナを巻いている。 もう1人、自分を”小生”と呼ぶヤツは、ツインテールにセーラー服を着たオッサンで、やたらと声の小せぇヤツは軍服姿のガキんちょ風だ(年はわからん)。 あとの2人はカタコトのチャイニーズっぽい女と、”サンタマリア”と言うたびに胸のロザリオを握る女……どういう仲間だ、これ。
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