第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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脂ぎった長髪にピンクのバンダナ。 ピンクバンダーとかいうヤツは突然叫び出した、つかウルセェな。 『ぬぉぉぉぉぉ!! デグさん氏ぃぃぃ!! タイーホされたら迎えに来てくれるでありますかぁぁ! 吾輩、感激ぃぃぃ!!』 お、ボソボソ喋る軍服はデグさんってのか。 軍帽で顔が隠れてよく視えないが、もしかして本当に子供か? 『はいはい、ピンクバンダー氏の感激は横に置いといて。ライブが始まる前に予習復習をしますぞ! デジタル星の人々は”カミエシ”と呼ばれる星の神が描いたイラストに命を吹き込む事で生まれるのであります! 神は複数存在するでありますが、神の絵柄によって民族が分けられるのです! ゆえにビジュアルは二次元! マンガやアニメのキャラそのものという奇跡!』 『……ボソ……ボソボソボソ……ボソボソ……シッテル……』 『そんなコト知ってるヨ! 真のファンなら当たり前ですダヨ!』 『しぇんほわ氏……それはそうですが……せっかくムーンラビット氏がご説明してくださるのです……ここは清聴するべきだとサンタマリアが……』 ふーん、チャイニーズはしぇんほわ、セーラー服のオッサンはムーンラビットって言うんだな。 『ロベルタ女史ぃぃぃ! 女史はお優しい! 小生ありがたき幸せ! では続きをば。代表民族は3つ。彼女達のグループ名【A・G・L】はそれぞれ民族名の頭文字を取ってつけたのであります……! ふふん、どうですかな? さすがにココまでは知らなかったでありましょう?』 ムーンラビット大威張りだな。 おっとだがしかし、ピンクバンダーが逮捕寸前のニヤケ顔を視せてるぞ。 ケケ! ありゃ反撃されんじゃねぇのか? 『ムーンラビット氏、その程度の情報、吾輩が知らぬとでも思ったでありますか。見くびらないで頂きたい! そんなものは当然の常識! 【A・G・L】はそれぞれ”アニメ塗り族”、”ギャルゲ塗り族”、”ライトノベル塗り族”、この3つの民族名の頭文字でござろう?★1 これは神達の絵柄並びに色の塗り方がそのまま民族名になっているのであります。デュフフフフ……(勝った!)』 あーあー言い負かしちまいがった。 ムーンラビット泣いてるじゃねぇか。 『……ぐぬぅ……ぐぬぬぅ……ヨォォォシ、合格ぅぅぅ!! 小生、ピンクバンダー氏の【A・G・L】愛を試したのでありまするぅぅぅ!! ほ、本当、本当でありますよぉぉ! ささ! お次は再びコールの練習をするであります! 歌に合わせたヲタコール! 行きますぞ! 諸君! ついてきたまえ! ッオー! ッオー! オィオィオィオィィィ! セーイ! カモンセーイ!!』 だーー! コイツらだったのかー! さっき聞こえた”オィオィ”はー! ヲタコールとか言ってたな、知識としては知ってたがコレがそうなのか。 それは霊体(からだ)の芯を揺さぶるような、腹の底から出す声だった。 ヘンなヤツらだ……でも、ま……うん、嫌いじゃねぇな。 『【A・G・L】への愛を込めてー! 腹式呼吸は当たり前ー! もっともっと声を出してー! 舞台まで届くようにー! いやもっと! 小生達の声を現世の(はく)とジャッキー氏まで届けるつもりでー! オィオィオィオィィィ!! ソレオィ! ホラオィ! (はく)ー! ジャッキー氏ぃ! 小野坂様ー! 岡村氏ー!』 オタ共のコールの練習は瞬く間に他の観客にも広がった。 ライブが始まる前だというのに、劇場はかつてない熱気に包まれ……って各星のオタクの一体感がすげーな。 …… ………… つーかよ、それよりコイツらさっき”ジャッキー氏”とか言ってなかったか? それってまさか俺の知ってるジャッキー? もしかして知り合いなのか? ★1:イラストの色の塗り方でこのように呼ばれる方法があるそうです(ネットで読んで知りました)。 デジタル星と日本では言語が違いますが、バラカスの翻訳システムで近い表現で訳している……という設定です。 ★2:このオタク達が出てくる章がコチラです。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=488&preview=1
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