第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ピンクバンダーとムーンラビットがハイすぎる。 そんなに騒ぐコトか? 俺にしてみりゃそんなモンは朝笹前だ。 だってよ、ライブ前にコールを聞いたじゃねぇか。 いいか、舐めるな。 バンブー星のパンダ族は一度でも視聞きした情報は決して忘れねぇ。 広い宇宙の数多の星の特徴、文化、言語(方言やスラング含む)も網羅してるし、複雑なプログラミングも、些細な(ひと)とのやり取りも、生まれて死ぬまで、死んでから今日まで、すべての記憶が頭の中に詰まってる。 この能力のおかげで俺は地獄送りを免れた。 コールを覚えるくらいなんてコトはねぇんだよ____とは、言えねぇわな。 せっかくヒトの姿に化けてるんだ。 身バレは避けてぇ。 『……そうか? まわりに合わせてただけだ』 無難に答えて煙に巻く作戦だ。 オタ集団はまんまと巻かれて、それ以上は突っ込まない。 よし、いいぞと思っていたら、ピンクバンダーが面倒な事を言い出した。 『さすがはジャッキー氏のフレンドですな……初ライブと初コールをあそこまでこなすとは。いやはや脱帽、イケル(くち)ではござらんか。うむっ、吾輩決めたでありますよ。(それがし)、我らオタ集団に入るがよろし』 『パンッ!? い、いや、俺はいいよ、』 『遠慮してるでありますか? 視たところ(それがし)、まだ黄泉に来て日が浅いのではござらんか? ライブもボッチで来ているし。なに、吾輩達も少し前に来たばかり。これもジャッキー氏が繋いでくれた縁であります。趣味も合うし仲間になろうぞ!』 『いや待て、仲間って、いや、なんつーかな、そうじゃねぇ。それに黄泉歴浅くねぇわ、コッチに来てから100年以上経ってるし……あぁ、なんでもねぇ、コッチの話。と、とにかくそれは遠慮しとくわ! 気持ちだけありがとよ! じゃあ俺、このあと用事があるから、またいつかな!』 雲行きが怪しくなって、俺にしては珍しく、しどろもどろで走って逃げた。 背中からオタ集団の叫ぶ声が聞こえてくる。 『来週もライブがありますぞー! 我々、(それがし)を待ってるんだからぁぁぁ!』 待つな、お前らだけでエンジョイしてくれ。 街に向かって走りに走るが、この霊体(からだ)じゃ走りにくいのなんのって。 そんなコトに気を取られ、気付けば(ひと)とぶつかった。 ドンッ! 『ああ、(わり)い! 今のは俺がヨソ視をしてた、』 慌てて謝り、ぶつかった相手を視れば、それは良く知る白雪だった。
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