第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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けっこうな勢いでぶつかった。 だが白雪は倒れるどころか、よろけもしねぇでシッカリと立っている。 さすがだな、鍛え方が違う。 『私こそゴメンナサイ! 痛くなかったですか?』 慌てた顔で俺を視る白雪は…………今日も綺麗じゃねぇか、 滑らかな琥珀の肌、ブラックダイヤの輝く瞳、オニキスの短い髪に、ルビーの唇、そして鍛え抜かれた霊体(からだ)は芸術家が手掛けた鎧のようで…………目が奪われる、 『あの、大丈夫ですか……?』 ああ……いかん、なにか言わねぇとオカシなヤツだと思われる、 言え、言うんだ、『大丈夫、心配ない』たったコレだけ言えばいい、 言ったらあとはさりげなく、ココから去ってオシマイだ、 白雪はヒトの姿の俺に気付いちゃいねぇ、 バレたらきっとうるさく言われる、 許可無しの再構築に怒り狂うに決まってる、 身バレは避けてぇ、絶対(ぜってぇ)避けてぇ、 なのに、なんだって動けねぇ、なんで…………ああ、わかった、 『本当に大丈夫?』 いつもより近いんだ、 パンダの俺なら面と向かって目が合ったって、身長差で十数メートル離れてる、 だが今の俺はヒトの姿で、身長は縮みまくって2メートルだ、 ちょうど白雪と同じくらい、 こんなに近くで目が合うのは初めてだから、それで、俺は、ガラにもなく動揺して____ 『あんまり……大丈夫じゃなさそうね、ちょっと失礼…………やだ! あなた霊体(からだ)が熱いじゃない! これは大変だわ……黄泉の国で体調不良はあり得ない。なのに熱があるなんて、霊体(からだ)のどこかにバグが出た証拠だわ……!』 あ、ヤベェ。 黙ったまんまで不審に思った白雪が、俺の額に手をあててオーバーヒートに気付きやがった……が、大丈夫だ、心配ねぇ。 これは一時の熱暴走でバグとかそんなじゃねぇからよ。 『待て、心配すんな。これは感情の昂りの影響で、』 なんで昂ったかは聞くんじゃねぇぞ、なんて思いつつ、落ち着くように言おうとしたのに遅かった。 『再び失礼! ふんぬぅぅぅぅぅっ!!!』 白雪は腰を落として俺の霊体(からだ)に手を回し、そのまま肩に担ぎやがった! ばっ! おまえ! 何する気だ! 『やっぱり熱いわ……でも大丈夫、すぐに緊急医療機関へ連れてきますから!  私は白雪、【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】の(おさ)で怪しい(もの)ではありません!』 『ま、待て! 俺はなんともねぇ! 心配すんな!』 冗談じゃねぇ! そんなトコに連れてかれたら再構築がバレちまう!
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