第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『自分で分からないの? あなた相当熱いわ、黄泉のオートリカバーが効かないなんて何か異常が出てるのよ。医療機関は初めて? でも大丈夫、私が一緒よ、心配しないで。それにね、最近とっても良いドクターが入ったの。視た所……あなた地球人よね?』 いや違う、バンブー星人だ。 とは口が裂けても言えねぇ俺は『……ん? んー、』と曖昧に濁す。 その返事を聞いてか聞かずか、白雪は勝手に続きを話し出した。 『少し前に地球から日本人のドクターが入国されたの。とても腕の良い優しい方でね。オートリカバーが効かない緊急患者の受け入れをしてくれる。どんな症状でも治してくださるわ。そこに連れて行きます。えっと……移動の陣は……あった! あそこだわ!』 『いや、だから待てって! 俺は病院なんか行かねぇぞ! どこも悪くないんだ!』 『いいから黙って、興奮すると熱が上がるわ。いい? 甘く考えないで。黄泉の国で体調不良はあり得ない。それなのに熱が出るという事は、下手すれば消滅するの。……あなた、もしかして黄泉に来たばかり? それで知らないのかしら』 何を言っても言い返される。 ヤベェ……ピンチだ……! これで病院へ連れてかれ、何ともない事がバレたら、再構築がバレたら、俺の正体がバレたら……白雪にシバかれる……! どうにかして逃げようと肩の上で暴れてみるが、黄泉一番の戦闘系はガッチリホールド、離しちゃくれねぇ。 そんなこんなで歩いて数歩の移動陣に着いちまった。 白雪は俺を担いだまま、鈴の音のような声でこう言いかけ…… 『陣よ、私達を大澤病院まで____』 い、言わすかぁっ!! 『陣よ! 病院は中止だ! 俺達を大草原へ!!』 白雪に被せるように移動先を叫んだ俺は、陣が緑色に発光するのを視つめていた。 間に合った……これで行き先は変更だ……が、なんだ、この既視感。 8年前、確かジャッキーもおんなじ事してなかったか? まあいいさ。 これで行き先は変わったんだから。
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