第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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陣の光に包まれて、霊体(からだ)が溶けるような感覚に陥った数秒後。 視界に映る景色が変わった。 高層ビルが乱立する街並が、辺り一面視渡す限りの百色華(ひゃくしょくか)。 大草原に咲く花々は、赤や青、黄色や橙、緑に紫……と、淡く揺れて時間で色を変えていた。 『ちょ、ちょっと! なんで行き先を変えちゃうの!?』 片手で俺を担ぎながら、白雪は慌てたようにこう聞いた。 なんでって……病院なんざ行きたくねぇし、行く必要もねぇからだ。 頼むから分かってくれ。 『あのな、落ち着け。俺の話を聞け。体調不良じゃねぇよ。霊体(からだ)が熱くなってるのは一時の熱暴走だ。原因も分かってるし、大人しくしてりゃあ、すぐに戻る』 担がれたままのこの体勢。 白雪の硬い背中が目の前だ。 黒いタンクトップは内側からはち切れそうで、その霊体(からだ)からは仄かに柑橘系の匂いがする。 『そうなの……? 本当に心配ないの……? こんなに……熱いのに?』 『ああ、心配ない。だから降ろしてくれねぇか?』 『……わかりました。でも一つお願いがあります。降ろしたら、その”原因”というものを教えていただけませんか?』 そりゃ言えねぇ。 当然そう思ったが、そのまま言えば話が長引くだけ。 だから俺は仕方なく、 『分かった。ただ全部は言えねぇ。話せるトコだけな』 苦し紛れにこう言って、やっとのコトで肩から降ろしてもらったんだ。 ……が、白雪は半信半疑で曇った表情。 理由(わけ)を聞いて、納得出来なきゃ病院へ連れて行く、そんなたくらみが笑っちまうほど透けて視えていた。 空は雲一つない晴天だった。 視上げれば風は弱く、エメラルドによく似た色のイルカの群れが、のんびり宙を泳いでいた。 スゥ……クルン、スゥ……クルクルクル、 ゆっくりとまったりと、小さな霊体(からだ)を回転させて、時折、互いの尾びれをペンペンとぶつけ合っている……
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