第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『ライブ? …………あっ! そう言えば劇場近辺、すごく(ひと)がいっぱいいたわ! やだ、ソレガシーさんはライブの帰りだったのね!』 ヒト族の女にしては霊体(からだ)が大きい、そんな白雪は顔を真っ赤に少女のように慌てている、……クソ、愛らしいじゃねぇか。 『ああ、そうだ。結局ライブは戦いだ。全力で歌って踊るアイドル達、俺達、観客(オタク)はそれに対してコールで応える。コトバにはしなくても『私達が好き?』『どうしようもなくな!』そういう気持ちをぶつけ合うんだ、そりゃあ発熱もするさ』 なんてな。 これはオタ達の受け売りだ。 普段の俺がアイドルのライブに行くというのはまずあり得ない。 だからこそ、もっともらしいコトを並べ立て、俺に繋がりそうな手掛かりを潰すんだ。 そう、絶対にバレちゃなんねぇ。 『……な、なんか奥が深いのね。……でも、ソレガシーさん、今とっても楽しそう。ふふふ……それだけ素敵なライブだったんでしょうね』 楽しそうに視えるか? そりゃオマエと一緒にいるからだ。 クソ……意識したら顔が熱くなってきた。 パンダの姿なら、赤面したって毛皮がそれを隠してくれる。 だが今の俺はヒト族だから、全部丸視え、丸分かり、不便だ。 『白雪はライブとか行ったりしないのか?』 ヘンな汗が出る。 俺は何か話して気を逸らそうと、テキトウな話を振ってみる。 すると白雪は首を傾げしばし考えこう言った。 『私? 私はないわねぇ。音楽を聴くのは好きよ。でもライブに行くとか、そこまで好きなアーティストは今いないのよ。あ、でも演劇は好きだわ! 母と一緒に視に行くらいに!』 『演劇が好き? そりゃ初耳だ、……って、いや何でもねぇ、コッチの話。それよりババ……いや、母親と視に行くなんて仲が良いんだな』 『ええ、私達は仲良しだし、生きてた頃から演劇が大好きなの! 先週は【黒雪姫】を視に行ったわ。一国の王女様が、継母のお妃様に何度も暗殺されかけるお話でね、スリリングでハラハラドキドキの連続……すごく面白かった!』 『…………その演劇、母親と一緒に視て気まずくならなかったのか? どっかで聞いたような話に思うんだが……』
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