第六章 霊媒師OJT-2

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『ちっ! 岡村でもえいみでもどっちでもいい! とにかくそいつをこっちに寄越せ! 俺の大事な娘の仇だ! この手で血祭りにあげなくちゃ気がすまねぇ!』 「出せるか、ボケェ! いいか、アンタにとって娘さんが大事なのと同じように、俺にとってコイツは大事な大事なウチの社員だ! 社長の俺が守らんで誰が守るんだ!」 『ほう、その若さで社長か、やるじゃねぇか。確かに社員の不始末は社長の責任って言うしな。おぅ、じゃあよ、おまえから血祭りにあげてあらぁ!』 「おぅ! 年寄りだからって、死者だからって手加減はしねぇぞ! コラァ!」 『望むところだぁ!……時に若造、おまえと俺との違い、わかるか?』 「死んでるか、生きてるか。それと年寄りか、若いかの違いだろ?」 『その通りだ。だが、それだけで話は終わらん。若造、おまえ、見た感じ……25~6才ってところか』 「え?……えぇ!? 25~6ぅ!? ああ、でも、ハイ! 僕、そのくらいです」 うわぁ、社長、25~6才って言われて、めっちゃ嬉しそう。 てか、思いっきり肯定しちゃったよ、しかも口調が丁寧だよ、"僕"ってなんだよ。 『おまえいつから身体鍛えてる? 昨日今日でその身体にはならんだろう』 「まぁな、ウチは親父がプロの格闘家だった。だから3才の頃には親父相手にスパーリングしてたよ」 『ふん、なら20年以上は鍛えてるって事か』 「そういう事だ」 本当は31年ですけどね。 『短ぇな』 「は?」 『若造、俺はな中学卒業と同時に家を継ぐため山に入った。ウチは代々林業で15の頃から毎日毎日斧を振ってたんだ。あの頃の林業はチェーンソーなんて使わねぇ。すべての木々、一本一本、手斧だけで倒してきた。樹齢100年の大物でも、だ。ただ木を切ってればいいって訳じゃねぇ。ありゃ俺と山との闘いだ。林業一筋55年、わかるか? 若造、おまえの倍以上の年月だ。それともう1つ。俺はとっくに死んでいる。死ぬとな、身体がどうなるか知ってるか? 年取って身体のあちこちに出てたガタがよ、きれいさっぱり治るんだ。この段階で年齢差は0じゃねぇけど縮まったも同然だ。なあ、おい。たかが20年ちょい鍛えた若造と、実践で55年鍛えた俺とじゃあ、一体どっちが強いんだろうなぁ』
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