第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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し、知りてぇ……! だってよ、 ”好きな人が好きな話を私にしてくれと嬉しい” =(イコール) 俺の話を聞いて嬉しいと思ったコトがあれば俺のコトが好き……って事だろう? 気になるじゃねぇか……! 白雪との付き合いは、かれこれ100年以上になる。 俺が黄泉に来たと同時に始まった、それ以来ずっと好きだ。 バンブー星のパンダ族と地球のヒト族。 視た目もなにもかも違うというのに、それでも好きでたまらねぇ。 本当ならよ、俺の好みはスーパーセクシーなパンダ姫だ。 濡れたようなつぶらな瞳、全身を覆う白黒毛皮、腹回りは豊満で、手足は短くシルエットは丸ければ丸いほど好ましい____そうだ、そういう色っぽいパンダが好きなんだ。 なのによ、白雪に出会って、俺は変わっちまった。 初めて会ったのは【闇の道】だった。 俺は元々地獄送りの悪パンダ。 死して尚、現世で悪さをしていたが、執拗に追ってくる【闇の道】にある日とうとう捕まったんだ。 思い出せば気分が悪い、あの道を造った奴は相当なサディストだ。 焼け上がる道はマグマでこしらえ、そこを歩かされる悪霊共は霊体(からだ)を焼かれる。 毛は縮れ、肉は溶け、骨が露わに、文字通り地獄の苦しみを味わうんだ。 俺と同時期に捕まった奴らは這いつくばって、”許してくれ”と泣き叫んでいた。 足裏の火傷に耐えれず膝を着き、その膝も焼かれ痛みに転がり、結局は霊体(からだ)全体焼かれてしまう。 そうなると自力では起きれない。 霊体(からだ)が溶かされ道に癒着し動けずいれば、今度は闇の触手が容赦なく引きずり起こすんだ。 まったくよ、ありゃあ地獄絵図そのものだ。 ほとんどの奴は痛みと恐怖に正気を失った、……が、俺はそうはならなかった。 そりゃあ辛かったさ。 あんな苦痛は初めてで発狂しそうになったけど、それ以上にムカッ腹が立ったんだ。 確かに俺は模範的なパンダではなかったかもしれねぇ。 生きてた頃も死んでからも悪い事は散々やった。 でもよ、悪事を働くにはそれ相応の理由があった。 自分と、愛するパンダ達を守る為、あの悪事は必要だったんだ。 だがよ、黄泉のオエライさんから視りゃあ言い訳の余地はねぇ、大罪なんだろ? 俺みてぇな悪党は地獄送りが当然なんだろ? 俺達がバンブー星で苦しんでた頃、あんたらは何にもしてくれなかったのによ。 罰する時だけ大張り切りだ。 いいさ、地獄だろうとどこだろうと逝ってやる。 だがな、俺は屈しねぇ。 とことん抵抗してやる、……つったって、バンブー星じゃあ泣く子も黙る悪パンダでも、【闇の道】ではただの無力なイチパンダ。 俺に何が出来るんだ。 だからせめてと大声で笑ってやった。 膝は着かねぇ、二本の足で立って歩いて、『洒落た床暖房だなぁ!』と皮肉交じりに高笑いをしてやった。 こんな道に屈するもんか、クソ野郎共、悔しがれ。 笑う俺をオエライさんはどこかで視てるはずなんだ。 それだけを心の支えに、苦痛を捻じ伏せ胸を張ってひた歩く……そんな時だった、白雪に初めて会ったのは。
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