第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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どこを向いても星が輝く宇宙空間。 そこに掛かる場違いな【闇の道】。 白雪は突如、道の横側に現れたんだ。 『あなたがバラカスさん? 私は黄泉の国、【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】の(おさ)、白雪といいます。 【黄泉(こうせん)情報調査機関】からの指示であなたを迎えにきました。 バラカスさんには、黄泉の国の為に造って頂きたい物があるのです。ええ……それはあなたにしか造れないものだわ。時間も掛かるし大変な仕事だけど、依頼を受けてくださったら、報酬として黄泉の国の永住権を差し上げます。はい、そうです。それはあなたの地獄送りを永久に中止するという事です、』 俺は耳を疑った。 地獄送りを中止する? 依頼したい仕事がある? 黄泉の国の永住権? この小娘は何を言ってるんだ? 『さぁ、逝きましょう。大丈夫、【闇の道】は一度でも捕らわれれば悪霊も善霊も決して逃げる事は出来ない……けど、【黄泉(こうせん)情報調査機関】の特別許可が出た(もの)のみ、離脱が可能となります。バラカスさんの許可証は私が持っていますので』 そう静かに言って、鋼のような腕を俺に差し出した。 …… ………… ………………チッ、気に入らねぇ。 『小娘が何を言ってやがる。俺は黄泉なんかに逝かねぇからな。とっとと帰れ』 大方、黄泉の国のオエライさんはパンダ族の能力に目が眩んだんだろうよ。 俺達は一度でも視聞きした事は決して忘れねぇ。 生きてる時だけじゃなく、死して尚、情報は蓄積される。 知識だけで言やぁ、全知全能に近いモノがあるんだ。 その知識をどう使うか、どう生かせるか、そこが腕の見せ所だ。 知識があってもそれを使いこなせなけりゃあ意味がねぇ。 当たり前だがな。 腕の良し悪しは置いといて、バンブー星ならそれは騒ぐほどの事じゃねぇ、誰もが持ってるデフォルトの能力だ。 が、視聞きした事を片っ端から忘れてしまう他の星の奴から視れば、喉から手が出る程ほしい能力らしいんだ。 俺達に分からない事はない、俺達に造れない物はない。 バンブー星ではこのチカラを欲しがる他星の奴らが、しょっちゅう襲撃をかけてきた、そのせいで俺は____ とにかくだ、俺の能力を黄泉なんかに使う気はねぇんだよ。 『バラカスさんは私に帰れと? なぜ? 仕事を受ければ黄泉の国の住人になれるのに』 すっとぼけた顔しやがって。 ”なぜ?”じゃねぇよ。 黄泉のオエライさんが決めたんだろうが、俺を地獄に送るって。 それを今更、永住権をやるから仕事をしろってか。 手の平返しもいいとこだ。  バカにするな、黄泉なんかに逝くかってんだクソ野郎。
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