第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ドン、と突き飛ばすように。 俺を道の横に追いやった白雪は、自分の足が癒着して身動きの取れない状態だった。 悲鳴も上げずに笑っているが、おびただしく流れる汗が必死に痛みに耐えているのだと言わずと知れた。 コイツ……何してんだよ、オカシイだろ、ただのお使いじゃなかったのか? なんだってここまでして俺を助けるんだよ…… 『おまえ……足……小娘の足、すっかりくっついちまったじゃねぇか、それじゃあ動けねぇだろ……チッ! 待ってろ、すぐに助けてやるから!』 クソッ! 剥がしに来いなんて言うんじゃなかった! まさか本当に来るとは思わねぇだろ! 俺よりもうんと小せぇ女に、無茶なコトをさせるつもりはなかったんだ! 心臓がバクバクいってる。 俺は宙を蹴って【闇の道】に行こうとしたんだ、が、それを白雪が止めた。 『待ってーっ! 来ないでください! せっかくバラカスさんの足を剥がしたのに、これで来たら意味ないじゃないですか! 大丈夫、私は自分で剥がせますから。待っててください。…………ふんぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!(バリ……バリバリバリバリ!)』 眉間に深いシワを彫り苦痛に顔を歪める白雪は、それでもあり得ない気合を入れて癒着の足を引き剥がした……が、やっと剥がれたその勢いで、小さな霊体(からだ)は飛んでしまって俺の腹にぶつかって止まった。 『おい、大丈夫かよ! ……ああクソ、大丈夫じゃねぇな……! 足の先、溶けちまって骨が出てる……! 待ってろ、霊体(からだ)の再建くらい俺でも出来る、前に教えてもらった事があるんだ、……アレ……? 待て……待て待て待て、どうやんだっけか! パンダ族の記憶は絶対だ、なのになんで思い出せねぇ! クソッ! 落ち着け忘れたんじゃねぇ、一時的に記憶が飛んでるだけだ、……ああ、悪い、痛いか? 痛いよな、今思い出すから、そしたら小娘の足を治してやれるから、』 俺、使えねぇ……! なにがバンブー星だ、なにがパンダ族だ、なにが全知全能だ。 肝心な時にパニックで、再建方法が飛んじまった。 パンダ族は”何かを思い出す”という作業が極端に苦手だ。 一時的に記憶が飛ぶ、こんな事は余程の事でない限り滅多にない。 だからこそ記憶の辿り方がわからねぇんだ。
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