第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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白雪……口、開いてるぞ。 時間にすればほんの数十秒だ。 だが、この沈黙がとてつもなく気まずい。 白雪は初めて聞いたオタトークにポカン顔。 黙ったまんま俺を視てる。 クソ……俺だって恥ずかしいわ。 普段、こんな喋り方はしねぇからよ。 それでもココは辛抱だ。 下手に照れたらかえってみっともねぇだろ。 第一、そんなコトをしたら嘘がバレちまうかもしれねぇし。 気を付けろ、油断するな。 俺の正体は絶対に知られちゃなんねぇ。 続く沈黙。 いたたまれない空気の中、ふと空を視上げれば宙を泳ぐイルカの群れがいた。 なんだ、おまえらまだいたのか。 ぷかぁ……くるくる……ぷかぁ……くるくるくる…… 平和だな……エメラルドによく似た色の、霊体(からだ)がキラキラ光ってる。 ああ、ああ、ああ……俺もイルカになりてぇや。 だが……ここまできたんだ。 挫けるな、俺。 せめてよ、(白雪の)気持ちの手掛かりを掴むまでは挫けちゃあダメなんだ。 だってよ、片想い歴も100年だ。 いいかげん、白雪(こいつ)の気持ちが知りてぇよ。 よ、よし……俺、ファイッ! 『白雪女史、吾輩のようなオタクと話すのは初めてでありますか?』 まずは慣れてもらわなくちゃな。 圧倒されて喋れないんじゃ話にならねぇ。 『……ご、ごめんなさい。すごく驚いてしまって。あのね、私は、……あ、えっと、その前に質問に答えなくちゃ。……はい、ソレガシーさんの言うオタクさんとお話するのは初めてです、』 そうだろうな。 俺らのまわりにピンクバンダーやムーンラビットみてぇなヤツはいねぇ。 『ご安心を、お嬢様。吾輩、決して危険人物ではありませんぞ。そんな顔をしないで頂きたいのであります。ほら、怖くない……デュフ……デュフフフフ……』 ここはひとつ爽やかに笑おうとした。 が、オタ集団に寄せた笑い方は、我ながら不気味で引いた。 ヤベェ、白雪はもっと引いたんじゃねぇか? と思ったが、そんな心配は無用だったようで…… 0f36be34-a94b-453d-9011-cd91bcf9078a ★平和なイルカの皆さん。 2021/5/4追加しました。
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