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白雪……口、開いてるぞ。
時間にすればほんの数十秒だ。
だが、この沈黙がとてつもなく気まずい。
白雪は初めて聞いたオタトークにポカン顔。
黙ったまんま俺を視てる。
クソ……俺だって恥ずかしいわ。
普段、こんな喋り方はしねぇからよ。
それでもココは辛抱だ。
下手に照れたらかえってみっともねぇだろ。
第一、そんなコトをしたら嘘がバレちまうかもしれねぇし。
気を付けろ、油断するな。
俺の正体は絶対に知られちゃなんねぇ。
続く沈黙。
いたたまれない空気の中、ふと空を視上げれば宙を泳ぐイルカの群れがいた。
なんだ、おまえらまだいたのか。
ぷかぁ……くるくる……ぷかぁ……くるくるくる……
平和だな……エメラルドによく似た色の、霊体がキラキラ光ってる。
ああ、ああ、ああ……俺もイルカになりてぇや。
だが……ここまできたんだ。
挫けるな、俺。
せめてよ、(白雪の)気持ちの手掛かりを掴むまでは挫けちゃあダメなんだ。
だってよ、片想い歴も100年だ。
いいかげん、白雪の気持ちが知りてぇよ。
よ、よし……俺、ファイッ!
『白雪女史、吾輩のようなオタクと話すのは初めてでありますか?』
まずは慣れてもらわなくちゃな。
圧倒されて喋れないんじゃ話にならねぇ。
『……ご、ごめんなさい。すごく驚いてしまって。あのね、私は、……あ、えっと、その前に質問に答えなくちゃ。……はい、ソレガシーさんの言うオタクさんとお話するのは初めてです、』
そうだろうな。
俺らのまわりにピンクバンダーやムーンラビットみてぇなヤツはいねぇ。
『ご安心を、お嬢様。吾輩、決して危険人物ではありませんぞ。そんな顔をしないで頂きたいのであります。ほら、怖くない……デュフ……デュフフフフ……』
ここはひとつ爽やかに笑おうとした。
が、オタ集団に寄せた笑い方は、我ながら不気味で引いた。
ヤベェ、白雪はもっと引いたんじゃねぇか?
と思ったが、そんな心配は無用だったようで……
★平和なイルカの皆さん。
2021/5/4追加しました。
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