第三章  霊媒師研修ー1

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「まずこの研修で覚えて貰いたい事は、除霊云々より先に“生きた人間”と“幽霊”との視分け方だ。エイミーの場合、霊力が強すぎて目視だけでの判別が難しいみたいだから」 おふざけから教官の顔に切り替えた清水社長の研修が始まった。 「霊の視え方は、視る側の力によって異なるんだ。昨日も言ったけど俺の場合、ハッキリと姿形を捉える事は出来るけど、輪郭には陽炎のような揺らめきがある。生きた人間にはまずありえないものだ。また別の霊力者の場合は半透明だったり、霊の身体一部が欠損してたりもする。昔の幽霊画で足が描かれていないのも、そういった理由があったのではないかと推測できる」 僕はひろげたノートにメモを取りながら、社長の座学に聞き入っていた。 「要は、持ち前の霊力の強弱によって同じ対象でも見え方はが異なるって話。霊力が強ければハッキリと姿が視える。霊力が弱ければ相応に透明度が上がり、霊体はどんどん視えなくなっていく。だから無霊力の人には霊体が視えないんだ。確かにそこにいるのにね」 社長の最後の一言で、僕の身体にぶわっと鳥肌がたった。 “確かにそこにいるのにね”って事は、もしかしてここにも幽霊がいたりするのだろうか……? 僕が気付いてないだけだったり……する? 「あー。エイミー、キョドってるよ? ここにも霊がいるんじゃないかってビビったんだろう」 「は、はい。少しだけ怖いかなーなんて……ハハハ、すみません」 「何言っちゃってるの? ここに霊がいたらエイミーならハッキリ視えるだろう?それが視えないならここにはいないって事だよ」 「そうでした。はぁ……良かったぁ」 「これから霊媒師になる男とは思えない発言だな。まあ、この会社内に先代以外の霊はいないから大丈夫だよ」 「そうなんですか?」 「ああ。この建物、外壁に蔦でいっぱいだろ?」 確かに。 出勤した時にまず目に入るレンガに絡まる無数の蔦は、なかなか味わい深い仕上がりになっている。 「アレ結界だから」 「え?」 「だから結界。漫画やゲームによく出てくるアレと一緒だよ。結界張っとけば外部から霊は入ってこれないんだ。昔は先代が張ってたんだけど死んじゃったからさ、今は俺が張ってる。念深い悪霊も弾くくらいの威力があるけど、先代の霊力はもっと上だから、俺の結界を暖簾くらいにしか感じないみたいで自由に出入りしてるよ」
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