第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『あぁ……その笑い方……その話し方……、すごいわ……! 私、今とっても感動してる! あのね、あのね、私先週【黒雪姫】を視に行ったって言ったでしょう? その中の登場人物にね、今のソレガシーさんとおんなじ話し方をするヒトがいたの!』 パ、パン!? 【黒雪姫】って継母の王妃が継子の王女を暗殺しようとする話だろ? そこにオタクが登場するのか? こんな喋り方の?  脚本書いたヤツ……ご乱心か? 『ぬぅ……白雪女史、【黒雪姫】とはスリリングでハラハラドキドキなストーリーと言ってたではござらんか。それなのに吾輩と同じ話し方のキャラが登場した……と?』 『そうよ! すっごくカッコ良かったわ! そのキャラは正確には”ヒト”じゃなくて”魔法の鏡”、精霊なの。脇役だけどキーパーソンで、最終的には彼のおかげで王妃様と王女様は仲直りをするんだから!』 何だそりゃぁ……そんな大事なキーパーソンをなんでオタキャラにしたんだよ。 スリリングなストーリー台無しじゃねぇのか? でもまぁ、白雪は楽しそうだし、これならオタキャラのまま話は進められそうだから良いけどよ。 『なるほどなるほど、その重要なキャラがオタクだったという事ですな。吾輩、把握! コポォ!』 『きゃー! ”コポォ”って魔法の鏡さんも言ってたー! あぁもう! 【黒雪姫】を思い出しちゃう! ねぇ、ソレガシーさん、良かったらもっと聞かせて!』 『御意! 白雪女史の為なら吾輩、たとえ100年でも聞かせましょうぞ!』 『嬉しー!!』 両手をあげて飛び跳ねて、腹を抱えて笑う白雪。 俺はその笑顔がもっと視たくて、いつまででも視てたくて、オタトークだけじゃなく、【A・G・L】のライブで覚えたオタ芸を打ち、もちろんコールも披露した。 そんなコトを延々と。 俺は結局、白雪の気持ちを探るコトも出来ないままで。 気付けば日は暮れ、宙を泳ぐイルカ達もいなくなっていた。 大草原の百色華(ひゃくしょくか)がゆっくりと分解を始める。 夕焼けの赤い空が星空に入れ替わり、時間で色を変える花はすっかりと消えていた。 代わり、大地には紫色に淡く光る、夜光花が辺り一面咲き広がっていた。
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