第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ため息を呑み込んで、見惚れていたら『帰りますか』と言いそびれ、俺はバカみてぇに艶髪を視てたんだ。 『ソレガシーさん、』 僅かに流れた短い沈黙、それを終わりにしたのは白雪だった。 分かってる、きっとこのあと言うんだろ? ”そろそろ帰りましょうか”って。 楽しい時間はコレで終わり、……と思っていたが、白雪が口にしたのは俺の予想とは真逆の事だった。 『ソレガシーさんに用事がなくて良かった。あのね、私も今日は用事がないの。もしイヤじゃなかったら、もう少しお話いいかしら』 『え……? …………あ、ああ、いや、あ……っと、もちろんであります、』 意外だった。 白雪がソレガシー(おれ)を引き留めた。 ”楽しい時間”は延長で、まだ少し話していられる。 それは俺も望んだ事で、だがしかし、嬉しいと思う反面……複雑な気持ちも湧いたんだ。 今の俺は銀髪碧眼、参考モデルは地球のヒト族だ。 白雪は、こういう男が好きなのか? 引き留められたのはソレガシー(おれ)であってバラカス(おれ)じゃねぇ。 今、白雪はバラカス(おれ)の事など忘れてる。 勝手だな、そう思ったら帰りたくなったんだ。 これ以上”ソレガシー”と一緒にいさせたくねぇ、なんてよ。 (うえ)を視れば降ってきそうな星空で、そこかしこで星が輝く……俺は小せえな。 くだらない嫉妬だとは思うけど好きなんだから仕方がねぇ。 なんにも知らない白雪は、子供みてぇな無邪気な顔で、 『良かった、嬉しいわ。ソレガシーさんと会ったのは今日が初めてだけど、初めてな気がしないの』 そりゃそうだ、俺達は100年前から知っている。 『それにお話してると楽しい。時間を忘れてしまうくらいに。……それでね、あの、ごめんなさい、今更思い出したの』 なにをだ? 『ソレガシーさん、昼間に私に聞いたでしょう?”バラカスって男を知ってるか?”って。バラカスがどうかしたの? 思い出したら気になっちゃって、それで、そのお話をしてくれたらなぁって』 あ……そうか、 ソレガシー(おれ)を引き留めたのは、バラカス(おれ)の話を聞きたかったのか、ソレガシーに隠れる俺の話を。 勝手だな、そうと知ったら帰りたくなくなった。 気持ちを探るチャンス……だ。 『白雪女史、御意であります』 地には夜光花が咲き溢れ、淡く優しく光を放つ……が、こんなんじゃあ白雪の顔がよく視えねぇ。 俺は指を2回鳴らして灯りになるモノを構築した。 『ソレガシーさん、それは?』 興味を持った白雪が俺の手元を覗き込む。 『これはライブの時によく使う、サイリウムのスティックライトでありますよ。最初は光らないのですが、ほら、こうすれば』 プラスチックの細長いスティック状。 地面に斜めに押し当てて、そこに軽く体重をかける……と。 ボゥ…… スティックを折ってやれば、途端に優しく光り出した。 『わぁ……キレイ』 2本のスティックのうち1本を白雪に渡すと、嬉しそうに視つめていた。 光の色はもちろん白だ。 白雪の白、白黒パンダの白。 俺の中では2人の色だからな。 1e22052e-b670-42f7-ab3d-1f5bcf5f33e6 ★挿絵は鳴上鳴さま💕 https://estar.jp/users/137817582 ヒト型バラカス、カッコイイ✨ 後ろの本体もカワイイのであります( *´艸`)
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