第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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俺達は向かい合わせに座っていた。 1メートルの距離を置き、2人とも手にはサイリウムのスティックライト。 白雪は初めてのライトに大はしゃぎだった。 『ソレガシーさん! このライト、早く振ったら光の尾っぽが出来るわ!』 鋼の腕が弧を描いて左右に動く。 力強さはオタ芸域を遥かに超えて、腕もライトも溶けちまって目で追えねぇ。 残像の光の線が次々流れ、まるで小さな流星群だ。 ”すごくキレイ!”、白雪は何度も同じ事を言いながら楽しそうに笑っていた。 …………こういう時、 キザな野郎は『君の方が綺麗だよ』、なんて言うんだろ? 俺は今までそういうヤツらをバカにしてた。 薄っぺらい、見え透いたおべっかだと思ってた。 けどよ、今この瞬間理解した。 おべっかじゃなかった、間違ってたのはこの俺だ。 さすがにな、口に出しては言わねぇけどよ、今日から俺もキザ野郎の仲間入り。 しかし……なんだろな、白雪がいつもよりも綺麗に視えるぜ。 距離が近いからか? パンダの時は身長差があるけどよ、ヒト族同士はおんなじ高さだ。 目の前の白雪は、サイリウムのスティックよりも、(そら)に輝く星々よりも、大地に広がる夜光花より、なによりも美しく一晩中でも眺めてられる。 俺が白雪に見惚れていると、視線に気づいたのかピタリと動きを止めた。 そして照れた顔で言ったんだ。 『……あ、あまりにもキレイで夢中になっちゃったわ。ごめんなさい、お待たせしました。それで……ソレガシーさんはバラカスの事を言いかけてたわよね? どういったお話なの?』 白雪は手を膝に、スティックライトをしっかりと握りしめていた。 なんだそんなに気に入ったのか、だったら毎日構築してやる。 それより、なんて切り出そうか。 ____白雪はバラカスをどう思ってるんだ? 聞きたいのは要はコレだ。 だが直球で聞くのはリスクが(たけ)え。 俺の正体がバレないように、欲を言えば俺の気持ちもバレないようにが好ましい。 気持ちを伝えるならバラカスとして伝えてぇからな。 さり気なく自然な感じで、どう聞くのがベストだろうか。 時間稼ぎに『あの、それが、』とのらりくらりとしていたら、せっかちな白雪は俺より先に切り出した。 『…………なんだか言いにくそうね、……ねぇ、先にひとつ聞かせて。ソレガシーさんは、バラカスの言葉が分かるヒトなのかしら』 鋼の背中を小さく丸め、白雪は探るように俺を視る。 ああ、あの事を言っているのか。
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