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俺達は向かい合わせに座っていた。
1メートルの距離を置き、2人とも手にはサイリウムのスティックライト。
白雪は初めてのライトに大はしゃぎだった。
『ソレガシーさん! このライト、早く振ったら光の尾っぽが出来るわ!』
鋼の腕が弧を描いて左右に動く。
力強さはオタ芸域を遥かに超えて、腕もライトも溶けちまって目で追えねぇ。
残像の光の線が次々流れ、まるで小さな流星群だ。
”すごくキレイ!”、白雪は何度も同じ事を言いながら楽しそうに笑っていた。
…………こういう時、
キザな野郎は『君の方が綺麗だよ』、なんて言うんだろ?
俺は今までそういうヤツらをバカにしてた。
薄っぺらい、見え透いたおべっかだと思ってた。
けどよ、今この瞬間理解した。
おべっかじゃなかった、間違ってたのはこの俺だ。
さすがにな、口に出しては言わねぇけどよ、今日から俺もキザ野郎の仲間入り。
しかし……なんだろな、白雪がいつもよりも綺麗に視えるぜ。
距離が近いからか?
パンダの時は身長差があるけどよ、ヒト族同士はおんなじ高さだ。
目の前の白雪は、サイリウムのスティックよりも、天に輝く星々よりも、大地に広がる夜光花より、なによりも美しく一晩中でも眺めてられる。
俺が白雪に見惚れていると、視線に気づいたのかピタリと動きを止めた。
そして照れた顔で言ったんだ。
『……あ、あまりにもキレイで夢中になっちゃったわ。ごめんなさい、お待たせしました。それで……ソレガシーさんはバラカスの事を言いかけてたわよね? どういったお話なの?』
白雪は手を膝に、スティックライトをしっかりと握りしめていた。
なんだそんなに気に入ったのか、だったら毎日構築してやる。
それより、なんて切り出そうか。
____白雪はバラカスをどう思ってるんだ?
聞きたいのは要はコレだ。
だが直球で聞くのはリスクが高え。
俺の正体がバレないように、欲を言えば俺の気持ちもバレないようにが好ましい。
気持ちを伝えるならバラカスとして伝えてぇからな。
さり気なく自然な感じで、どう聞くのがベストだろうか。
時間稼ぎに『あの、それが、』とのらりくらりとしていたら、せっかちな白雪は俺より先に切り出した。
『…………なんだか言いにくそうね、……ねぇ、先にひとつ聞かせて。ソレガシーさんは、バラカスの言葉が分かるヒトなのかしら』
鋼の背中を小さく丸め、白雪は探るように俺を視る。
ああ、あの事を言っているのか。
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