第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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___ソレガシーさんはバラカスの言葉が分かるの? 白雪がそう聞くのも無理はねぇ。 分かるヤツは少ないからな。 俺が細工をして初めて壁が取り払われる、意思疎通が可能となる。 だが、そういう相手は慎重に選ぶ必要があるんだ。 下手に疎通を取って、後からトラブルになったら白雪に迷惑がかかるだろ(話してみたら毒舌すぎると何度か言われた)。 トラブル回避に効果があるのは、なるべく疎通を取らない事だ。 ”キュゥキュゥ”言ってりゃ平和に過ごせる。 だから滅多に疎通は取らん。 8年前、ジャッキーと取ったのが最後じゃねぇか? そういう事情は白雪も知っている。 だからこそ確認したかったんだろ。 オタクのソレガシー。 俺らのまわりにいないタイプで、今の今まで”ソレガシー”の名前が出た事はないし(そりゃそうだ、俺が今日考えたんだから)、当然会った事もない。 街で偶然出会った男が突然『バラカスを知ってるか?』と聞いてきたんだ。 ただのオトモダチなら良いけどよ、白雪の経験則でトラブル発生か? と警鐘がなってるのかもしれねぇ。 ソレガシーはバラカスの言葉が分かる→ソレガシー、バラカスの毒舌に傷付いた→白雪は【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】の(おさ)なんでしょ? エライんでしょ? だったらあのパンダどうにかしてくれ!→白雪、久しぶりに平謝りか……? てな感じによ。 バラカスの言葉は分からない、そう答えて安心させてやりてぇ気持ちはある。 だが、そうはいかねぇよ。 片想いも100年だ、少しくらい気持ちを聞かせろ。 大地に正座、サイリウムのスティックライトで敬礼ポーズ。 俺は陽気なオタキャラを演出しつつ、 『吾輩、バラカス氏の言葉が分かるであります!』 テンション高めで言い切った。 すると白雪は、 『……あぁ、そう、そうなの、分かるのね……そっか……ん……それでねソレガシーさん、ヘンなコトを聞いて悪いんだけど……その、大丈夫?』 言葉が分かると知った途端、白雪は不安げになった。 膝の上でスティックを握りしめ、背中を丸めて俺の顔を覗き込むが、その表情は情けなく眉も下に向いていた。 なんだよ、そんなにか?  思わず笑いそうになったが、なんとか堪えてこう言ってやったんだ。 『”大丈夫”とはバラカス氏の毒舌のコトでありましょうか。白雪女史、心配ご無用。まったく問題ありませんぞ!』
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