第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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白雪のマザコンスイッチが激しくオンだ。 母親自慢が止まらねぇ。 やれ優しいだ、やれ美人だ、やれ薬物のエキスパートだ、この100年、ずっと聞かされてきてるしよ、どの順番で自慢するかも完璧に覚えてる。 白雪よ、それぜんぶ知ってるからな。 やっぱり……もっとハッキリ言わねぇと駄目だ。 俺の気持ち、白雪以外はみんな知ってる。 8年前、あのジャッキーでさえ、すぐ気付いたってのによ。 なんでお前は気付かねぇんだろな。 白雪は驚くくらいに素直で純粋、そのせいもあんのかな? 白雪(こいつ)の鈍感は100年ずっと変わらない。 もしかしたらこれから先も、この調子かもしれねぇや。 …… ………… ……………… 何度も思ったさ。 ちゃんとハッキリ好きだと言おうと。 でもよ、それで振られたらよ、もう会えなくなるかも、顔が視れなくなるかも……って、ガラにもなく怖くなったんだ。 それで言えなくなっちまった。 それから揺れた。 もう ”親友” のままでいいだろと思える日もあれば、気持ちを伝えて好き同士になりてぇと思う日もあった。 毎日毎日……いや、毎時毎時変わるんだ。 だから会うたび遠回しによ、好きだと気持ちを匂わせて、あわよくば気付いてくれねぇかなって……チッ、思い起こせば情けねぇ話だわ。 今夜も揺れてる。 さっきまでは気持ちを探るだけでいいと思ってたのに。 ウッカリ白雪に ”好きなパンダはいるのか” と聞いちまって、『バラカスよ』なんて言われたら、そういう意味じゃないのは分かっちゃいるけど欲が出たんだ。 揺れが激しくなる、好きだと気持ちを伝えたくなっちまう。 鈍感な白雪はこれから先も変わらねぇ。 白雪が変わらないなら、俺が変わるしかねぇよな。
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