2369人が本棚に入れています
本棚に追加
僕が首を傾げていると、それを邪魔するかのようにお父さんが叫んだ。
『かかってこい若造! さっきから避けてばかりじゃねぇか! 口ばっかり達者なハナタレ小僧がぁ! ウチの山にいた熊の方がよっぽど元気だぞ!』
嬉々として攻撃の手を止めないお父さん。
悪鬼の笑顔がこんなにも恐ろしいものとは……知らなかった。
その悪鬼の渾身のローキックが社長の左足を襲う。
その時、またあの音が聞こえた。
ブンッ
あっ!
光った!
謎の起動音と共に社長の左足も発光を始める。
これで両手両足、全ての四肢が無色透明の光を放ち、まるで陽炎のように揺らめいている。
陽炎……?
確か、社長の目から視た霊体は全体的に陽炎に覆われていると言ってなかったか?
あんな感じなのだろうか……?
ブンッ、ブンッ、ブーーーーーーーーン
更に短い2度の起動音の後、何かの電波を拾いっぱなしのようなブーン音。
その段階で、社長の身体全体が揺らめく陽炎に完全に覆われた。
「エイミーよく見とけ。今の俺の姿、これが俺の目から視える霊体だ。わかりやすいだろ? 俺はエイミーほど霊力がないから、霊体を視る事はできても触る事はできない。だけどな、俺が格闘系霊媒師って呼ばれてるのを覚えてるか?」
「覚えてます。で、でも、どうやって闘うんですか? 社長は……その、霊体に触れないのに、」
「ああ、触れない、普段はな。ならどうやって闘うんだって話だろ? それはな”纏う”んだ。俺の生身の肉体に薄切りにした死者の魂を服を着るみてぇにな。そうすると、表面だけだが俺は霊体になる。そうなりゃ話は簡単だ。同じ霊体同士。殴るも蹴るも、全く問題なくできるっ」
横をチラリと見る事も無く、社長の左手はお父さんの攻撃を受け止めて、そのまま後方へと弾き飛ばす。
最初のコメントを投稿しよう!