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『…………それでね、昔、生きてた頃、母と一緒にゴハンを作ってた時にね、母は「料理より解毒剤作ってる方が簡単よ」なんて言ったの!』
ケケケ、まだ言ってら。
本当にお前は母親の話になると止まらねぇのな。
今までたくさん聞いてきた。
母親の話だけじゃねぇがよ。
お前の言葉は一字一句間違えずに覚えてる。
この後はこう言うんだろ?
____おかしいわよねぇ、解毒剤作る方が難しいのに、
ってよ。
『おかしいわよねぇ、解毒剤作る方が難しいのに!』
ケケケ!
ほらビンゴだ。
楽しそうに幸せそうに、お前はいつだってそんな顔で笑うよな。
初めて会った【闇の道】の時でさえ笑ってた。
俺はお前の笑顔が大好きだ。
『白雪女史、』
声を掛ければピタッと止まる、慌てた顔で俺を視る。
『……あっ! ごめんなさい! 私ったら1人で喋ってたわ!』
サイリウムのライトを持ったまま、両手をブンブン振っている。
白い光が深い瞳に映り込み……ああ、この目だな。
この目を近くで視ちまって、俺の”揺れ”は振り切ったんだ。
『いいのであります。吾輩は白雪女史が楽しいと嬉しいのですから。それで、話の続きがしたいのでありますよ。一等最初に言ったバラカス氏の話です』
言いながら少し前に。
座り直して白雪との距離を詰めたのと同時、真面目な顔を前に向けた。
こういう時、ヒト型は良いな。
気持ちを表に出せる、コトバだけじゃ伝わらない想いを乗せる事が出来る。
『バラカスの話……そうね、ソレガシーさんが最初に話そうとしてくれた事よね。どんなお話なのかしら。私、全部聞くわ』
白雪も少し前ににじり寄る。
2人の距離が更に縮まり心臓が絞られる……が、怯んでられるか。
俺は気合いを入れて声を絞り出した。
『それは……そうですな、まずはココから話しましょうか。女史は……バラカス氏に好きな人がいるのを知っているでありますか? おっと、好きと言っても友情でも家族愛でもありませんぞ。マジョリカがジャッキーを好きなのと同じ気持ち、彼は恋をしているのであります。もうかれこれ100年想い続けている、』
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