第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『…………それでね、昔、生きてた頃、母と一緒にゴハンを作ってた時にね、母は「料理より解毒剤作ってる方が簡単よ」なんて言ったの!』 ケケケ、まだ言ってら。 本当にお前は母親(ババア)の話になると止まらねぇのな。 今までたくさん聞いてきた。 母親(ババア)の話だけじゃねぇがよ。 お前の言葉は一字一句間違えずに覚えてる。 この後はこう言うんだろ? ____おかしいわよねぇ、解毒剤作る方が難しいのに、 ってよ。 『おかしいわよねぇ、解毒剤作る方が難しいのに!』 ケケケ! ほらビンゴだ。 楽しそうに幸せそうに、お前はいつだってそんな顔で笑うよな。 初めて会った【闇の道】の時でさえ笑ってた。 俺はお前の笑顔が大好きだ。 『白雪女史、』 声を掛ければピタッと止まる、慌てた顔で俺を視る。 『……あっ! ごめんなさい! 私ったら1人で喋ってたわ!』 サイリウムのライトを持ったまま、両手をブンブン振っている。 白い光が深い瞳に映り込み……ああ、この目だな。 この目を近くで視ちまって、俺の”揺れ”は振り切ったんだ。 『いいのであります。吾輩は白雪女史が楽しいと嬉しいのですから。それで、話の続きがしたいのでありますよ。一等最初に言ったバラカス氏の話です』 言いながら少し前に。 座り直して白雪との距離を詰めたのと同時、真面目な顔を前に向けた。 こういう時、ヒト型は良いな。 気持ちを表に出せる、コトバだけじゃ伝わらない想いを乗せる事が出来る。 『バラカスの話……そうね、ソレガシーさんが最初に話そうとしてくれた事よね。どんなお話なのかしら。私、全部聞くわ』 白雪も少し前ににじり寄る。 2人の距離が更に縮まり心臓が絞られる……が、怯んでられるか。 俺は気合いを入れて声を絞り出した。 『それは……そうですな、まずはココから話しましょうか。女史は……バラカス氏に好きな人がいるのを知っているでありますか? おっと、好きと言っても友情でも家族愛でもありませんぞ。マジョリカがジャッキーを好きなのと同じ気持ち、彼は恋をしているのであります。もうかれこれ100年想い続けている、』
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