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パン……言っちまった……!
これでもう後には引けねぇ!
でもいいさ、今夜は引く気はねぇからよ。
”バラカスに好きな人がいる”、これを聞いた白雪は目を大きく見開くと、素っ頓狂な声を上げた。
『えぇ!? そうなの!? 知らないわ! だってバラカスが恋をしてるだなんて、そんな話は聞いた事がないもの!』
いや……それに近いコトは言ってるぞ?
けっこう何度も、お前が好きだと大事だと。
____何度も言ってるが危険な場所に行く時は俺に言え!
____全部かわりに俺が行く!
____お前がいなけりゃ黄泉になんざ来なかった、
____白雪のいる所が俺の居場所だ、
____誰に何を言われても嫌なモノは嫌なんだよ!
____でもよ、お前が言うなら何だってしてやるさ、
こういうのが100年分、まわりはどんどん気付いてく。
お前だけだ、分かってないのは。
『バラカス氏に好きな人がいるというのは本当であります。ただ……お相手の女性はものすごく鈍感でして……確かにバラカス氏はハッキリと想いを伝えたコトはありませぬ。ですがほぼほぼそれに近いコトは何度も言ってるのでありますよ。なのに彼女にはまったく伝わりません』
言っててため息が出ちまった。
この100年の空振りが、走馬灯のように蘇る(もう死んでるが)。
何を言っても伝わらない、白雪の受け止め方は斜め上すぎるんだ。
当の本人。
分かっちゃいねぇ白雪は、しばし黙り、しばし考え、俺と同じくため息をついた。
そして、
『そうなの……相手の方は鈍感なのね、……バラカス、頑張っても気持ちが伝わらないだなんて可哀そうだわ……』
と俯いて、もう一度深いため息をついたんだ。
そうか、可哀そうと思ってくれるか。
やっぱり優しい女だわ。
……
…………
でもよ、これぜんぶお前のせいだけどな。
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