第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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バラカスの恋の相手(おまえだ)、そのあまりにもな鈍感っぷりを俺は惜しげもなく話して聞かせた。 白雪は最初こそ真面目な顔で聞いていたが、途中から鼻をズルズルさせ始め、最終的には半べその呆れ顔になった。 『こう言ったら失礼だけど、その方はあまりにも鈍感だわ。バラカスがそこまで言ってるのにどうして分からないのかしら……?』 ブフォッ! ヤ、ヤベェ、吹いたら鼻水出ちまった(パチン!→ティッシュ構築、鼻拭き拭き)。 笑わせるなよ、それ、お前だけは言ったらダメだろ。 いや……つーかその前に、今の話で相手の女が(だからおまえだ)鈍感だと判断はつくんだな。 アレか、【人のコトなら分かるのに自分のコトだと分からない】の、出力最大版か。 頼むから出力を抑えてくれ、自分のコトだと気付いてくれ。 『ソレガシーさん……バラカスはさぞ辛いでしょうね……』 『…………えっと……はい、』 辛い、確かに辛いが、お前を視てると笑っちまって、辛いのもまた幸せだ。 『バラカスは私にとって大事なパンダだわ。もう100年の付き合いよ、彼が辛いと私も辛いの』 『…………あっと……はい、』 そうか、俺が辛いと白雪も辛いのか。 一緒だな、お前が辛いと俺も辛い。 けど(わり)い、そう思ってくれるのが嬉しくてたまらねぇや。 『ん……あっ、そうだ! ねぇ、良い事を考えたわ! 私も何か協力出来ないかしら? 私、恋のキューピットになってもいい、バラカスの代わりに気持ちを伝えるの!』 『あぁっ!? いや、失礼、キューピット!? あいや待たれい! それは、その、ありがたきご提案ではありまするが、ちょっとダメというか、』 無理! 俺が好きなのは白雪で、鈍感なのも白雪で、なのになんだ? 当の本人がキューピットになるってか? 無理に決まってんだろ! ヤベェ、話が変な方に向かってる。 『なぁに? 心配? 私がうまく出来ないんじゃないかと思ってる? 大丈夫、こういうのは得意なの! いい? 鈍感だって言うけど、それは決して悪い事ではないわ。”鈍感力” って言葉も一時流行ったじゃない。私は仕事で似たような子達とたくさん接してきたの。ねぇ、ソレガシーさん。何度言っても想いが伝わらない、それって彼女だけが悪いのかしら?』 前半は笑っていたが、話の後半、その表情はガラリと変わった。 えらく真面目で、まるで仕事中の白雪だ。
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