第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『数度伝えて伝わらないなら伝え方が間違ってる。こう言ってダメならこうって、色々試さなくてはいけないわ。特に黄泉は色んな(ヒト)がいるんだもの。個々に合った伝え方、伝わり方を探すの。これはね【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】で学んだ事よ。勤務歴約200年、(おさ)になって100年。これまで数えきれないオペレーター達の研修をしてきた。中には座学に着いてこれない子もたくさんいた、途中で辞めたいと泣き出す子もいたわ。でもね、それはその子達が悪いんじゃない。教える側の私達が悪いのよ』 『教える側が悪い……、』 という事は俺の伝え方が悪いのか……? でもよ、他の奴らはみんな知ってる、知らないのは白雪だけだ。 『そう、これは恋でも同じ。好きって気持ちを伝えたい、でも伝わらない。じゃあなんで伝わらないか、一度立ち止まってよく考えてみるの。バラカスはとっても頭の良いパンダだわ。そのくらいすぐに気付きそうなものなのに……ふふ、きっとその方の事が大好きなのね。簡単なコトが分からなくなっちゃうくらいに』 『………………肯定、』 俺は白雪の言う事に掴まれていた。 伝わらなければ伝え方を変える____言われてみればもっともだ。 チッ、同じコトを別の誰かがしてりゃあよ、きっとそこに気が付けた。 簡単なコトが分からなくなるくれぇ、俺はコイツに惚れてるって事だ。 『な、なんちゃってー! ご、ごめんなさい! なんだかエラそうなコト言っちゃったわ、恥ずかしー! 私だってその方とおんなじ! 人のコト言えないの!』 白雪は片手にサイリウム、反対側の空いた手を扇子代わりにパタパタと振っている、……顔が赤い。 『”人の事を言えない” というのは? 女史はよく考え分析されてますぞ』 ま、【人のコトなら分かるのに自分のコトだと分からない】の出力はまだ最大だが。 『ん……ありがとう。そうね、色々考えるのは……得意じゃないけど慣れてるわ。仕事中はたくさんの事を考えて、判断して、決断しなくちゃならないから。……でも、それは仕事の時だけよ。仕事が終われば、そういうのぜーんぶオフにしちゃうもの』 『仕事とプライベートを分けるのは良いコトであります』 『そうよね、私もそう思う。それから、分ける事が必要だとも。仕事じゃない日はあんまり細かく考えないようにしてるわ。みんなが好き! 母が好き! 演劇が好き! 楽しい! 幸せ! ふふふ、そのくらいしか考えない、でもそれで充分なの』
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