第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

52/285

2364人が本棚に入れています
本棚に追加
/2550ページ
それだけで充分、か。 確かに仕事中の白雪とプライベートの白雪は違う。 普段はおっとり、よく遊び、よく食べて、よく筋トレし、屈託なく笑う。 仕事の時は【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】の頼れる(おさ)だ。 トップとしての業務は一般オペレーターの比じゃあねぇし、何かがあれば素早く状況を判断し、的確な指示を出さなくちゃならねぇ。 日に迎える死者の数は膨大で忙しさは桁違い、目が回る思いだろう。 オペレーターが足りない日は自ら現場に出るし、休みの日だって呼び出される事がしばしばだ。 そんな生活を100年。 そりゃあ休みの日くれぇ、なんも考えたくねぇわな。 顔の熱が収まったのが、白雪は扇子代わりの手を止めて俺を視た。 『ねぇ、ソレガシーさんはその方と顔見知り? お話した事はあるの?』 『あ、ありますぞ』 そりゃあな、ソレガシー(おれ)バラカス(おれ)だからな。 『そう、良かった! それなら一緒に行きましょう、その方の所へ。私、キューピットになるわ! でも、いきなり知らない私が訪ねていったら、その方きっとびっくりしちゃう。だから一緒に行くの。それで私、ぜんぶ話すわ。バラカスがとっても優しくて頭が良くて素敵なパンダだって事を!』 夜が明けたら行きましょう! と張り切る白雪。 コイツは一度決めたら止まらねぇ。 なんたって、その昔、マジョリカとジャッキーの為に、たった1人でマザースターに行っちまったくれぇだ。★ なんとかしねぇと、面倒なコトになる。 『白雪女史、少し待ってくださんらんか! その、女史がその方に会いに行くというのは……無理であります』 とりあえずでそう言うと、白雪は『なぜ?』と首を傾げる。 サイリウムの白い光と夜光花の淡い光が、瞳に映り俺の心臓はバクバクと音を立てた。 『そ、それはその……むぅ……そうだ! その前に聞きたい事があります。もし、もしですぞ。白雪女史を好いている誰かがいるとして、女史なら気持ちをどう伝えてほし……いや、どうしたら伝わるでありますか?』 こうなったら本人に聞くのが一番だ。 こんな質問を唐突に、普通の奴なら疑問に思うだろうが、なんたって白雪だ。 しかも今は勤務時間じゃねぇ、オフ時間の白雪なら素直に答えてくれるはずだ。 『わ、私!? 私を好きになるヒトなんていないわ!』 白雪は途端頬を真っ赤にさせて、片手で顔をあおぎはじめた。 ★白雪ちゃんが8年前にマザースターに行っちゃった後のシーンがココです。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=693&preview=1
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2364人が本棚に入れています
本棚に追加