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それだけで充分、か。
確かに仕事中の白雪とプライベートの白雪は違う。
普段はおっとり、よく遊び、よく食べて、よく筋トレし、屈託なく笑う。
仕事の時は【光道開通部】の頼れる長だ。
トップとしての業務は一般オペレーターの比じゃあねぇし、何かがあれば素早く状況を判断し、的確な指示を出さなくちゃならねぇ。
日に迎える死者の数は膨大で忙しさは桁違い、目が回る思いだろう。
オペレーターが足りない日は自ら現場に出るし、休みの日だって呼び出される事がしばしばだ。
そんな生活を100年。
そりゃあ休みの日くれぇ、なんも考えたくねぇわな。
顔の熱が収まったのが、白雪は扇子代わりの手を止めて俺を視た。
『ねぇ、ソレガシーさんはその方と顔見知り? お話した事はあるの?』
『あ、ありますぞ』
そりゃあな、ソレガシーはバラカスだからな。
『そう、良かった! それなら一緒に行きましょう、その方の所へ。私、キューピットになるわ! でも、いきなり知らない私が訪ねていったら、その方きっとびっくりしちゃう。だから一緒に行くの。それで私、ぜんぶ話すわ。バラカスがとっても優しくて頭が良くて素敵なパンダだって事を!』
夜が明けたら行きましょう! と張り切る白雪。
コイツは一度決めたら止まらねぇ。
なんたって、その昔、マジョリカとジャッキーの為に、たった1人でマザースターに行っちまったくれぇだ。★
なんとかしねぇと、面倒なコトになる。
『白雪女史、少し待ってくださんらんか! その、女史がその方に会いに行くというのは……無理であります』
とりあえずでそう言うと、白雪は『なぜ?』と首を傾げる。
サイリウムの白い光と夜光花の淡い光が、瞳に映り俺の心臓はバクバクと音を立てた。
『そ、それはその……むぅ……そうだ! その前に聞きたい事があります。もし、もしですぞ。白雪女史を好いている誰かがいるとして、女史なら気持ちをどう伝えてほし……いや、どうしたら伝わるでありますか?』
こうなったら本人に聞くのが一番だ。
こんな質問を唐突に、普通の奴なら疑問に思うだろうが、なんたって白雪だ。
しかも今は勤務時間じゃねぇ、オフ時間の白雪なら素直に答えてくれるはずだ。
『わ、私!? 私を好きになるヒトなんていないわ!』
白雪は途端頬を真っ赤にさせて、片手で顔をあおぎはじめた。
★白雪ちゃんが8年前にマザースターに行っちゃった後のシーンがココです。
https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=693&preview=1
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