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恥ずかしがって中々答えない白雪。
答えてほしい俺は、もう一回頼み込んだんだ。
『そんな事はありませんぞ、……女史は、とっても、とっても…………と、とにかく、教えて欲しいのであります! これはバラカス氏にとっても大事なコトなのであります!』
『バラカスにも? よ、よく分からないけどそうなのね。え……え……えっと……もし、本当にそんなヒトがいたらの話だけど…………私なら、言葉を飾らず、ストレートに『好き』って言われたいわ。……ああもう、何を言わせるのよ、恥ずかしー!』
サイリウムのスティックライトを投げ出して、白雪は両手で顔を隠してしまった。
そんな白雪が可愛くて愛しくてたまらねぇ。
コイツはオフとオンにギャップがありすぎだ。
本当はよ、もっとたくさん聞きてぇコトがある。
パンダは恋愛対象になるのか、気持ちに応えられない時、気まずくなってもう会わなくなってしまうのか、そういう事、全部聞いておきたいと思った。
けどよ、ソレガシーの姿でコレをを聞くのは卑怯な気がしたんだ。
白雪にウソをついてまで、己の保身に走るなんざしちゃいけねぇ。
ぶつかって、ダメなら潔く傷付くべきだ。
今、ココロの揺れは完全に振り切った。
怖くないと言えば大嘘だ。
でもよ、このまま ”親友” でいいのか?
気持ちを伝えたいんだろう?
たとえ伝えて玉砕されても、ああそうですかと嫌いになんてなれねぇよ。
伝えても伝えなくても好きは変わらん。
100年前、【闇の道】で出会った日から、ずっとお前が好きなんだ。
だったらよ、
『白雪、』
顔を隠す愛しい女の肩に手を置いた。
白雪は驚いたように俺を視る。
そりゃそうか、急に戻った。
”白雪女史” じゃあなく ”白雪” と呼び捨てだ。
それでもコイツは素直に『なぁに?』と答えてくれる。
黄泉で最強と呼ばれる女なのによ、【光道開通部】の長なのによ、威張ったりは絶対にしねぇんだ。
短い髪が夜風にあたり、微かに毛先を揺らしてる。
タンクトップに軍パンツ、霊体は鋼の筋肉質だ。
脂肪の足りねぇ腰回りは引き締まって手足も長え、色っぽさの欠片もねぇ。
だがよ、生きてた頃も死んだ後も、白雪以上に良い女を視た事がねぇ、優しくて強くて綺麗な女。
夜光花は咲き溢れ、夜はまだまだ明けそうにない。
天を視れば満天の星空が、”踏み出せ” と瞬いているように視えた。
気持ちを伝えるんだ。
『聞いてくれ、……俺は、』
霊体を前に、白雪との距離を詰めた。
柑橘の良い匂いがふわっと漂い、頭の中がクラリとする。
白雪は何が起きたかわからずに、戸惑いながら俺を視つめ……その、深い瞳の中には銀髪碧眼のヒト型の男、”ソレガシー” が映りこんで____
____パンーーッ!!
そうだった、今の俺はバラカスじゃねぇ!
この姿のまま『好き』だと言っちまうトコだった!
イカン、すぐに元に戻らなくちゃだ!
だが白雪の目の前で戻る訳にはいかねぇ、戻ればコイツは烈火の如く俺に説教をかますだろう。
怒られるのはいい、それもまたご褒美。
けど今夜はダメだ、話が脱線して気持ちを伝えられなくなる。
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