第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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…… …………こうなったら、 俺はバネのように跳ね立って、 『白雪女史! ちょっとだけココで待っていてほしいのであります! 5分、いや、1分で戻りますゆえ!』 言い残して駆け出した。 後ろから『どうしたの!? 何があったの!?』と白雪の声が聞こえるが、構わずひたすら走ったんだ。 『ハァ……ハァ……ここまで来れば大丈夫だろ』 ヒト型は走りにくいったらない。 大草原はどこまでいっても夜光花が広がって、俺は振り向き、白雪の姿が視えないのを確認すると急いで爪を鳴らした。 パチン! ぼわん! 再構築の解除だ。 一瞬で俺の姿がパンダに戻る、と同時に間髪入れずに白雪の元へと走った。 ドドドドドドドドドドドドドドッ!! 巨大パンダは一歩がデカイ。 あっという間に白雪の前に戻って来れた。 『バ、バラカス!? え!? どうしてココに? ソレガシーさんは?』 白雪は目を白黒させていた。 驚くのも無理はねぇや。 すぐに戻る、そう言ったソレガシーの代わりにバラカスが来たんだからよ。 『ソレガシーは帰った。そんなコトより白雪、俺はおまえに話がある』 クソ……! 心臓が絞られる、バクバクいってる。 姿をパンダに戻しただけで、緊張度は100割増しだ。 『話? なぁに、……もしかして、バラカスの恋のお話かしら……?』 白雪は上目遣いに無邪気に言った。 なんならキューピットになる気満々なんだろう。 気持ちはありがてぇがそりゃ無理だ。 俺はグッと拳を握り、腹にチカラを込めた。 今夜は引かねぇ、なにがあっても絶対引かねぇ。 『ああ、そうだ。俺の好きな女の話だ』 『やっぱり! あのね、ソレガシーさんから聞いたの。知らなかったわ、バラカスが恋をしているなんて。言ってくれたら良かったのに。私、ぜんぶ聞くわ』
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