第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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バラカスのオウチはすっごく大きい。 霊体(からだ)の大きなバラカスが住むんだもの。 当たり前と言ったらそうだけど、部屋の広さは地球の野球場よりあるんじゃないかな? 床は芝生が敷き詰められて、裸足になると気持ちが良い。 椅子とかテーブルとか、そういった家具類は使う時だけ構築してる。 だから部屋には何もない、…………あ、そうでもないか。 部屋の真ん中、より少し端寄り。 そこにはウチのベッドがある。 いつ泊りに来ても良いように、出したままにしてるんだ。 『マジョリカー、朝メシはなに食ったー?』 奥にあるキッチンからバラカスの大きな声がした。 ウチも負けずに大きな声で返す。 『サラダー!』 『それだけか?』 『うん!』 『……ダメだな、なっちゃいねぇ。もっと食わせねぇと。オイ、なにかリクエストはねぇか?』 『リクエスト? じゃあ パンケーキ!』 『おう、まかせろ』 バラカスがそう言って少しすると、部屋の中は甘い匂いでいっぱいになった。 久しぶりだなぁ、バラカスのパンケーキ。 甘くてふわふわですっごく美味しい、ウチの大好物だ。 黄泉の国なら指を鳴らせば、なんだって構築出来る。 服も宝石も、それからパンケーキも。 だけどバラカスは作るんだ、わざわざ、手間暇をかけて。 前に一度、料理をする理由(わけ)を聞いた事がある。 ____なんでかって?  ____そりゃあアレだ、ありきたりだけどよ、愛情を込められるだろ、 ____俺は口が悪いらしいからな、 ____気持ちを伝えるには旨いモノ食わせるのが手っ取り早いんだ、 バラカスはウチを娘だって言う。 大事な娘だから作って食べさせたいんだって。 娘のウチにはパンケーキ、じゃあ白雪ちゃんには何を作ってあげるんだろ。 出来上がったパンケーキをバラカスが持ってくる。 ウチは指を鳴らしてテーブルとクッションを出現させた。 『わぁ! おいしそう! 良い匂いだなぁ……ウチ、お腹空いてきちゃったよ』 『おう、たくさん食え。足りなきゃいくらでも作ってやるから』 足りなきゃって……バラカスのパンケーキは普通のよりもうんと大きい。 1枚食べたら充分だよ、あ、でもな、おいしいから2枚くらい食べちゃうかも。 『アリガト! じゃあじゃあ、いただきまーす!(パクッ!)……ああ、おいしい……幸せ……あーあ、白雪ちゃんが今日休みだったらなぁ。一緒に食べられたのに。それで、バラカスの告白に白雪ちゃんはなんて?』 パンケーキを頬張りながら、一番気になるコトを聞いてみた。 『ブゴホッ! ゴホゴホゴホッ! チッ……まだ覚えてたのか、』 バラカスは咳こんで動揺した。 『パンケーキ、すっごくおいしいよ! でもさ、忘れる訳ないじゃん(モグモグ)。それで、白雪ちゃんはOKしてくれたの……?』 『あぁ? ああ、ん、そうだな、そうかもな、どうだろな、えっと、モゴモゴ』 うわぁ……こんなバラカス、初めてだ。 いつもの強気なパンダはどこへいったんだ。 でも、ウチ、こんなもんじゃないから。 ぜんぶ話してもらいますよ。
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