第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ゴロンゴロンゴロン、ゴロゴロゴロゴローーーーー……ゴチンッ! えぇっ!? 目の前で転がるパンダは勢いがついちゃって、そのまま横に更に転がり、部屋の端っこ、壁にぶつかり動きを止めた。 『バラカス!』 急いで駆け寄ると、バラカスはオシリをつけて芝生に座り、イテテなんて言いながら尻尾の付け根をさすっていた。 『もーなにやってるのー! 嬉しいのは分かるけどはしゃぎすぎだよ、……大丈夫? 壁、』 大きな霊体(からだ)をすり抜けて、ウチは壁が壊れてないかをチェックする……と、バラカスは不満げに文句を言った。 『薄情な娘だな。オヤジよりも壁の心配か?』 『だってぇ、ウチらが怪我したってオートリカバーがあるけどさ、壁は自動修復されないもん』 『……ま、そうだけどよ。ココは『パパー! ダイジョウブー?』って抱き着くのが正解だろ』 『…………ん、そうなの? じゃあ、パパー!』 『”じゃあ”は余計だ』 あははは、冗談を言い合って、目を合わせて笑い合って、それで、そのあと、少しだけ沈黙して____ バラカスは床に座り込んだまま、『はー』とため息をついていた。 ため息と言ったって、漏らす声は明らかに幸せで、ウチは……ウチも、幸せだ。 それにしても……あはは、相変わらず大きな背中だ。 バラカスは芝生の上でだらんと座って、毛皮の白は未だに薄赤。 後ろから、その毛皮にさわってみると、ふわっふわのほっこほこのホッカホカ。 ああ、この感触。 ずっと変わらないんだな。 ウチが死んで黄泉に来て、無気力で何も出来なかったあの頃から、ずっと一緒にいてくれる……大好きなバラカス。 『パパ、良かったね』 両手を広げて大きな背中に抱き着いた。 バラカスは『あぁ?』なんてそっけないけど照れてるのはバレバレだ。 パパが幸せだと娘も幸せだよ。 しかも、恋の相手が大好きな白雪ちゃんだなんて、こんなに嬉しいコトってある? 『マジョリカ、』 バラカスがウチを呼んだ。 前を向いたまま振り向きもしないまま。 ウチは毛皮に顔を埋め『んー?』とだけ答えた。 『心配かけたな』 『ううん、』 『アリガトな』 『ううん。ウチ、これから2人のジャマしないようにしなくちゃ』 『パン? ナニ言ってんだ。お前がジャマな訳ねぇだろ。今まで通り好きな時に来りゃあいい。白雪もその方が喜ぶ』 『ん、アリガト……あー嬉しいなぁ! やっと両想いになれたんだもん! そうだ! お祝いしようよ! みんなで集まってさ!』 『バカ言うな! そんなのしなくていい! 恥ずかしいわ、』
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