第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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バラカスはお祝いなんかしなくていいと、慌てたように立ち上がる。 ドスドスと歩き出し、でもね、途中でピタッと止まったの。 『なぁ、マジョリカ。お祝いは良いからよ、代わりに一つ頼みてぇコトがあるんだ』 そう言って、そろーりそろりと振り返り、ウチに向かって両手を合わせた。 ん? 頼みってなんだろな? 分かんないけどバラカスが言うんだもん、ウチの答えは決まってる。 『いいよ、なんでも言って!』 ウチ、頑張るよ。 お祝いは別にするけど、まずは先にバラカスの願いを叶えちゃう。 『そ、そうか。(わり)いな、お前も忙しいのによ。それでその頼みって言うのはな、』 …… ………… …………………… 『えーーーーーーーっ!? なにそれーーーーーーー!! バラカス、白雪ちゃんを騙したの!?』 ビックリした! まさかバラカスがそんなコトをするなんて……驚きすぎて冷静じゃいられない。 とりあえず……ウチはテーブルに残っていたパンケーキを一口食べた。 今必要なのは甘いもの。 糖分はいつだってココロを落ち着かせてくれる。 『パ、パン!? 人聞きの(わり)いコト言うなよ! 騙したんじゃねぇ。アレはたまたま流れでよ、言い出すキッカケを見失っただけだ、』 しどろもどろの言い訳パンダは、縋る目をしてウチを視る。 はぁ……これは大変なコトになるな……なんたって白雪ちゃんは曲がったコトが大嫌い。 とうぜんウソも大嫌いだ。 『それで? バラカスは禁止されてる ”自分自身の再構築” をした挙句、”ソレガシー” と名乗って、正体を明かさずに白雪ちゃんと話をしてたの?』 ウチがそう聞くとバラカスは正座した、芝生の上で背筋を伸ばす。 『そ、そうだ』 『ふーん。最初のキッカケは白雪ちゃんの早とちりだとしても……途中で正体を明かせば良かったのに』 『そんなコト出来るかよ。言えば怒るに決まってる』 『悪いのはバラカスだもん。怒られたら良かったのよ』 『う……』 『それに、どうしても怒られるのが嫌だったら、途中で用事があるって帰るコトも出来たでしょ?』 『そ、そりゃあな。でもよ、せっかくヒト型になったんだ。いい機会だから白雪が俺をどう思ってるか聞き出そうと思ってな』 『うわ……必死すぎ……でもな、10年20年の片想いじゃないもんね。100年だもん、必死にもなっちゃうよね……』 『だろうっ! さすがは俺の娘、分かってる!』 『んも、調子良いんだから。それで? ウチは何をしたらいいの?』 『お、おう! それな! お前に頼みたいコトってのはよ、』 それからたっぷり夜になるまで。 ウチら親子は、【100年の片想いがやっと実った次の日にフラれたりしないようにするぞミーティング】をした。 そして今、ウチは【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】の前で白雪ちゃんを待ち伏せ中だ。 出てきたら白雪ちゃんをゴハンに誘ってウチと2人で話すんだ。
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