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夜のミシレイニアスは昼間以上に賑わっている。
建ち並ぶ巨大なビル、たくさんのお洒落なお店、大きな劇場。
街中に光が溢れ、華やかで、心が躍り、特別な時間が流れる街。
道を行く着飾った霊達は、皆、楽しそうに笑い合っていた。
おしゃべりしながら歩いて数分。
ウチと白雪ちゃんは街の中心部、ミシレイニアスで1番の高層ビルに着いた。
ここは1階から110階まで、ぜーんぶゴハン屋さん。
黄泉はいろんな星の霊達の集まりだもん。
食文化は星の数だけある。
このビルに来れば、各星のおいしいものが食べられるから、朝も、昼も、もちろん夜も、いつだって霊でいっぱいなんだ。
『白雪ちゃんはなにが食べたい? ん、なんでもいいの? じゃあ最上階の ”フェリーチェ” に行かない? あのお店なら席はぜんぶ個室だもん。落ち着いて話せるよ』
入るお店がすぐに決まって、さっそくエレベーターに乗り込んだ。
偶然、ウチらと一緒に3人のヒト族が乗り合わせ、先に入ったそのうち1人が『何階ですか?』と聞いてくれた。
『110階をおねがいします』
ウチがそう答えると、女の霊はポチっとボタンを押しながらニコッと笑ってくれたんだ。
綺麗で優しそうな霊だなぁ。
視た目はウチらと同じヒト族、黒い髪に黒い瞳……もしかして日本の方かなぁ……?
居合わせた3人は、ボタンを押してくれた若い女性、それから上品そうな年配の女性、それと……ん、それと……ちょっぴり怖そうなお爺さんだ。
背が高くてがっしりしてて、作業着みたいな服を着てる。
女性2人はニコニコなのに、お爺さんはしかめ顔……もしかして怒ってる?
ウチはちょっぴりドキドキしながら白雪ちゃんにくっついて、さり気なくお爺さんを観察してたの。
そしたら……
『貴子、婆さん、やっぱし俺は帰るぞ! レストランだかなんだか知らねぇが、気取ったトコでメシ食ったって旨くもなんともねぇや! 俺はよ、婆さんが作る田舎料理が一番好きなんだよ!』
ひゃあっ!
お爺さん、いきなり大声出した!
な、なに?
顔はコワイしバラカスみたいに口が悪いし、やっぱり……怒ってるの?
知らない霊だし、どうして良いのか分からないしで、ウチと白雪ちゃんで固まっていると、
『もう! お父さん、こんなところで大きな声出さないで! ご、ごめんなさいね、びっくりされたでしょう?』
若い女性がウチらに謝ってくれたんだ。
お父さん……? というコトは3人は家族なんだ。
フンッ!
おへそを曲げてそっぽを向くコワイ顔……お父さんは一旦横においといて、上品な感じの年配女性、お母さんかな?
彼女も続けてこう言ったの。
『本当にごめんなさいねぇ。うちのお父さん、生きてた頃から短気だし怒りっぽいし口は悪いし……困った人なのよ。でもね、悪気はないの。ただ、田舎の人だから声が大きくて、何でも思った事を口に出しちゃう。おまけに顔は怖いし……ああ、駄目だわ、ごめんなさい。お嬢さん達には怖い思いをさせちゃったわね。
ほら、お父さんもお嬢さん達にあやまりなさい! もし貴子やユリがヨソで、おんなじように怖い思いさせられたら、嫌でしょう?』
白髪の髪を綺麗にまとめたお母さん、だけど中々の迫力だ。
強面のお父さんは、汗を浮かべてタジタジになっている。
なんだろ……お父さん、バラカスっぽいな。
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