第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『お父さんは声が大きいのよ』 『お嬢さん達にあやまりなさい』 お母さんと娘さんに怒られたお父さんは、大汗掻いて後ずさり……けど、そのあとすぐに謝ってくれたんだ。 『嬢ちゃんら……あぁ、その、悪かったな。俺はよ、元々地声がデケえんだ。あんた達を怖がらせるつもりはなかったんだよ』 頭を掻きつつ背中を丸め、今度は大きな声じゃない。 そっか、いきなりでびっくりしたけど、悪い(ひと)じゃないんだな。 ますますバラカスっぽいぞ……そう思ったら、あはは、もうぜんぜん怖くない。 『うん! 大丈夫だよ。ウチ、ちょっとビックリしたけど、お父さんがコワイ(ひと)じゃないってわかったもん』 そうか? なんて言いながら、ニコッと笑うその顔はむしろ可愛く思えちゃう。 白雪ちゃんもおんなじで、気にしてないと言った後、3人のヒト族に話しかけていた。 『今夜はみなさんでお食事ですか?』 『はい、今日は父と母の50回目の結婚記念日なんです。それで、みんなで食事をしようってココまで来たんですけど……父がねぇ、母のご飯の方が良いってずーっとゴネてて……はぁ。あ、そうだ。私、藤田貴子と申します。父は真、母はさゆり。私達、黄泉で一緒に住んでるの』 答えてくれたのは……娘さんの貴子さんだ。 『まぁ! ご家族が仲良しで素敵だわ! 私は白雪、この子はマジョリカ。私達は友達同士なの、よろしくね。それから……お父さん、お母さん、結婚記念日おめでとうございます! 50回目だなんてすごいわ、ずぅっと一緒って事ですもの!』 わぁ! そうだよね、50年も一緒だなんて憧れる。 ウチはまだ8年だ……ウチも、ジャッキと大倉と、ずっと、ずーっと一緒にいたいよ。 『ふふふ……そうねぇ。途中で死んでしまったけど、こうして黄泉の国でも一緒にいれるだなんて幸せだわ。うちのお父さん、顔は怖いし口は悪いし喧嘩っ早いし……生きていた頃、ご近所さんに ”狂い熊” なんて陰で呼ばれてたのよ。でもね、本当に優しいの。こんなお婆ちゃんを大事にしてくれるわ。もちろん、娘の貴子も孫のユリもね』 そう言って、ほんのり顔を赤くしたお母さん……いいな、素敵だな。 その隣では、お父さんがムスッとしながら横を向いて、 『家族を大事にすんのは当たり前だろが。あとよ、お前が”こんなお婆ちゃん” なら俺は ”どうしようもねぇジジイ” だ。若かろうが婆さんだろうが何年経とうが惚れた気持ちに変わりはねぇ。さゆりは俺の大事なカミさんだ』 力強く言い切った。 『『『 きゃーーーーーーーっ! 』』』←ウチと白雪ちゃんと貴子さん 『やだ、お、お父さん……』←顔の真っ赤なお母さん もうっ! お父さん、その顔で今の発言は反則だよーっ!
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