第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『な、なんだよ! おまえらの方がよっぽど声がデケェじゃねぇか!』 言ってから照れたのか汗がすごいし顔も赤い。 恥ずかしいのを誤魔化す為か、お父さんはいきなり話を変えた。 『と、とにかくだ、結婚はいいぞ。で? そこの嬢ちゃんらは結婚してんのか? 若そうだからまだか?』 『ウチは結婚してる! 白雪ちゃんはまだだよ。でもね、近いうちにすると思う』 結婚、してほしいなぁ。 そしたら白雪ちゃんは、ウチのママになるんだ。 『マ、マーちゃん! き、気が早いわよ、だってまだ昨日の今日よ?』 『え? そうだけどなんで? 好き同士で付き合ったら結婚するでしょう? ウチはジャッキと出逢ってすぐ結婚したよ』 『た、確かにそうだけど、私、えっと、どうしよう、どうしたら、あわわわわ』 仕事中、いかなるトラブルがエスカレされても動じない白雪ちゃんが動揺しまくっている……こんな白雪ちゃんを視るの初めてだ。 『おい、デカイ嬢ちゃん落ち着け。なんだ、惚れた男がいるのか』 ショート寸前の白雪ちゃんにお父さんが聞く。 白雪ちゃんは ”惚れた男” と言われて更に顔を真っ赤にしたけど、『うん』と小さく頷いたんだ(キャー!)。 お父さんは少し考え、そして今度はこう聞いた。 『そうか。嬢ちゃんよ、ソイツは優しいか?』 『はい』 『ソイツは働き者か?』 『はい』 『ソイツは乱暴したりしないか?』 『も、もちろん!』 『そうか。あとよ、ソイツは心底嬢ちゃんに惚れてるか?』 『…………そ、それは、』 白雪ちゃんの言葉が詰まった、んも! 心底惚れてるに決まってるじゃない! 『心底惚れてるよ! だってバラカスは100年も片想いしてたんだ! 昨日、やっと白雪ちゃんに想いを伝えたの。気持ちが通じ合ったってバラカス、すごく喜んでたよ!』 思わず割り込んじゃった、だってバラカス、床を転がる程喜んでたもん。 ずっとずっと想い続けてたんだ。 『100年も……そうか、どやら良い男みてぇだな。嬢ちゃん、そういう男はよ、大事にしなきゃ駄目だ。多少口が悪くても、多少ツラが怖くても、惚れた女と家族を大事に出来りゃあ、男はそれで上等だ。それに良い男に惚れられる女は良い女だからな。嬢ちゃん、どっかで視たコトあると思ったが、【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】の大将だろ? 嬢ちゃんの評判は聞いてるよ。よく働き、下のモンの面倒もよく視てるってよ。嬢ちゃんみてぇな女に惚れられる男なら間違いねぇだろ。とっとと結婚しちまえ!』 ガハハハハハハハ! お父さんはそう言って豪快に笑うと、白雪ちゃんの背中をバシバシ叩き、叩かれた白雪ちゃんは真っ赤な顔で照れている。 お母さんと貴子さんは『うちのお父さんがごめんなさい! でも、幸せになってほしいわ』と、ほんわり優しく笑ってくれた。 チーン、 エレベーターが止まった、階を視ると102階。 『私達はここで降ります。またどこかで会えたらいいですね。素敵な夜を』 藤田さんご一家は3人揃って降りていく。 ウチらは手を振り視送って、エレベーターは110階に向かって昇り出していた。
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