第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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◆ 最上階に複数あるレストラン。 今夜行くのは地球料理の専門店、【フェリーチェ】だ 。 地球料理と言うだけあって、イタリア料理、ドイツ料理、日本料理、中華料理、フランス料理……と、ここで食べられないものはない。 何でもあるし、何を食べてもおいしいの。 おんなじ料理をウチがオウチで構築しても、同じ味にはならない、【フェリーチェ】にはぜーったいに敵わない。 それもそのはず、ここのシェフは全員、生前は知らない人がいないくらいの有名な料理人。 厨房で指を鳴らせば材料が降ってくる。 その材料でシェフ達は、手間をかけ、技術と愛情を注ぎ、最高の一皿を作ってくれるんだ。 ゴハンはおいしいし、席は個室だし、ここなら落ち着いて話が出来る。 ウチ、頑張らなくっちゃ。 やっと両想いになれバラカスの喜びようはウチまで幸せになるくらい。 白雪ちゃんも照れているけど嬉しそうだし、この2人がこれからずっと仲良しでいられるように、少しだけお手伝いするの。 ん……その ”少しだけ” が、すごーく大変なんだけどね。 お店に入ると【フェリーチェ】のスタッフさんが個室まで案内してくれた。 初めて視るおじさんで(視た目は50代くらい……?)、黄泉に来たのも働き始めたのも、ここ最近だと言っていた。 だから緊張してるのかな? (そうは視えないけど……) おじさんは、なんていうのか……独特な(ひと)だった。 『いらっしゃいませー! お二人様ですねー! こちらの席へどーぞー! こちらの席へどーぞー! こちらの席へどーぞー!』 えと……な、なんで何度も言うんだろ? 隣を歩くおじさんは、ニコニコしながらウチらを案内してくれる。 『お客様、今夜は【スターレイク】の席をご用意出来ますよ。水のかわりに星の欠片で満たした湖、女性に大人気なんです。さぁ、【スターレイク】へどーぞー! 【スターレイク】へどーぞー! 【スターレイク】へどーぞー!』 ま、まただ……なんで3回繰り返すのかな……? べ、別にいいけど……気になっちゃう。 白雪ちゃんと目を合わせ『なんで3回?』コソコソ話すと、それが聞こえてしまったみたいで…… 『ハッ! これは大変失礼しました! 私、名前は菅野と申します。地球の日本出身で、ついこの間、黄泉に来たばかりです。さっきのは、その……はは、クセでして。いやね、私、生前は息子と一緒にコンビニを営んでいたんですよ。そこでレジが込み合うと、大きな声で『こちらのレジへどーぞー!』なんて何度も呼びかけていたものですから……まだそれが抜けてないのかもしれません。ごめんなさい、うるさかったですよね』 と、はにかんだ。 なんだぁ、そういう事かぁ……って。 コンビニだって、そんなに言ったらお客さんビックリしちゃうと思うけど……ま、いっか。
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