第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『こちらでございます。オーダーが決まりましたらテーブルの水晶にお声かけください。それではごゆっくり、素敵なディナーを』 菅野さんは、そう言ってニコッと笑うと部屋を後にした。 白雪ちゃんと2人になって、ウチは思わずはしゃいでしまう。 だってステキ、ここには何度も来てるけど【スターレイク】に入ったのは初めてだもの。 『ねぇ、すごいよ、まるで森の中みたい……湖、星の欠片でいっぱいだ、綺麗だねぇ……ここで白雪ちゃんとゴハンが食べられるなんて幸せ……!』 【スターレイク】、この部屋が女性に人気ってわかるなぁ。 廊下を歩いてドアを開け、中に入ると別世界。 まず目に入るのが、大きな星の湖だ。 水の代わりに星の欠片で満たされて、赤や青、黄色に紫、緑に橙。 数えきれない綺麗な色が淡く光を発してる。 その湖の真ん中に、シンプルな木のテーブルと木の椅子が置いてあり、ゴハンはそこで食べるんだ。 湖まわり、地面は芝生が敷き詰められて、歩くとすごくフッカフカ(バラカスのオウチみたい)。 芝生の向こうはグルッと丸く、木がたくさん植えてあるけど、奥へ行くほど光が届かず、だんだん影が深くなる……これって、ずっと向こうまで森が続いてるように視せてるんだろうなぁ。 視上げれば落ちてきそうな星空が。 時折優しい風も吹き、ここが部屋の中だなんて信じられない。 『マーちゃん……綺麗だねぇ。ここはゴハンもおいしいし、素敵な夜になりそうだわ。さあ、テーブルまで行きましょう』 うっとりとした顔で白雪ちゃんはそう言うと、そっとウチの手を取ってくれた。 あ……これってウチが今日、踵の高い靴を履いてるからだ。 白雪ちゃんは何も言わなくても、こういうの視ててくれるんだよなぁ。 ウチが転ばないように気遣ってくれるの……もう、大好き。 2人で手を繋ぎ、湖の真ん中まで歩いていって、大きな木を切っただけの味のあるテーブルに着いた。 椅子も木だけど、柔らかいクッションが敷いてあり、オシリが痛くならなようになっている。 『わぁ、クッションふわふわだぁ。えへへ、気持ちいいな。ああ……それにしても綺麗だねぇ。森の中の大きな湖の真ん中でゴハンを食べるなんて、普段なら絶対にないもの。なんだか夢の世界みたい……』 ウチもうっとりしちゃう。 前に座る白雪ちゃんは、黒い瞳に星の光が映り込み、プリズムみたいに視えるんだ……すごく綺麗だなぁ。 『マーちゃん、先に飲み物を頼みましょう。なにがいい? ワインかしら』 白雪ちゃんに聞かれたけどウチは首を振った。 ワインは大好き、でもね、最近は現世によく行くでしょ。 そこでジャッキと大倉に教えてもらったお酒があるの。 2人が大好きなお酒、飲んでみたらおいしくて、ウチも大好きになったんだ。 『ううん、今夜は別なのにする。白雪ちゃんはいつものワイン? 一緒に頼んじゃうね』 テーブルの端っこ。 そこに浮かぶ白水晶にウチは声をかけた。 『グラスワインの赤、それと焼酎のお湯割り、おっきな梅干し入りでお願い』 言い終わって前を向くと白雪ちゃんは『焼酎梅割り……渋いわね』と目をパチパチさせている。 ウチが『飲んでみる? おいしいよ』と答えたのと同じくらい。 水晶が光り、テーブルの上にはそれぞれ、グラスワインと焼酎の梅割りが構築し終えていた。
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