第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『じゃあ、えっと……白雪ちゃん、お仕事おつかれさまでした、』 言いながらグラスを持つと、白雪ちゃんもおんなじようにグラスを持った。 『うん、おつかれさま。マーちゃん、お休みなのに会いに来てくれてありがとう、』 約束なんかしていない。 突然押しかけ待ち伏せしたのに、白雪ちゃんはイヤな顔をしないんだ。 それどころか ”ありがとう” なんて言ってくれる。 こんなに優しい女の子だもの。 バラカスが好きになるのも無理はないよ。 チンッ! ワイングラスと焼酎グラス、小さく重ねて乾杯をした。 『んー、仕事終わりのワインはおいしいわぁ』 『休みの日の焼酎もおいしいよぉ』 …… …………はぁぁぁ……♪ 好きなお酒を一口飲んで、そのおいしさに霊体(からだ)の力が抜けていく。 リラックスモードに突入だ。 一息ついてゴハンもオーダー。 机に浮かぶ白水晶に【シェフにおまかせ野菜多めのヘルシーメニュー・デザートは季節のフルーツケーキをホールで】とお願いした。 あとはおいしいお酒とおしゃべりを楽しみながら、ゆっくりと待てばいい。 フェリーチェ(ここ)の料理は手作りだから、少し時間がかかるんだ。 お酒みたいに出てくるのは早くない。 そう、早くないのだよ。 ぜんぶ、話してもらっちゃう。 ウチには重大な使命があるんだ。 バラカスの "ソレガシー” 問題をなんとかしなくちゃいけない。 そのためには、まず白雪ちゃんの気持ちをいっぱい聞くの。 『今夜のメニューはなんだろう? ”シェフのおまかせ” って毎回メニューが変わるから楽しみだよねぇ。でも少し待たなくちゃ。待ってる間に……ん、ウソ、本当は待ってる間だけじゃないけど。ウチ、白雪ちゃんの話を聞かせてほしいナ。コト細かに、ぜんぶ、そう、もう、ぜーんぶっ!』 テーブル越しに身を乗り出してそう聞くと、白雪ちゃんは一瞬怯んで固まった……けど、すぐに言ったの。 『ぜ、ぜんぶ? は、恥ずかしいな、ん、でも、でも私、さっきも言ったけど……分からないコトだらけなの。マーちゃん……私、話すわ。だから色々教えてほしい。…………でも、何から話したらいいの?』 恥ずかし顔から真剣顔に、そしてすぐに不安顔。 表情がクルクル変わる。 光道(こうどう)にいる時の、(おさ)の顔とはぜんぜん違う。 白雪ちゃんは乙女の顔になっていた。
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