第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『大丈夫、安心して。まずウチが質問するから、白雪ちゃんはそれに答えてくれたらいいよ。ほら、光道(こうどう)の新人研修でも似たようなコトするでしょ? では1つ目の質問です。白雪ちゃんはバラカスの気持ち、ぜんぜん知らなかったの?』 あれだけ盛大に匂わせていたバラカス。 パンダの恋を知らない(ひと)はいないくらい、まわりのみんなは気が付いていた。 『……それがね、ぜんぜんなの。私、仕事以外は察しが悪くて……』 白雪ちゃんは恥ずかしそうに眉を寄せた。 ん……休みの日の白雪ちゃんを思い出せば、それはそれで不思議じゃない。 バラカス……この100年大変だったねぇ。 『では2つ目です。白雪ちゃんはバラカスのコト、ずーっと親友だと思ってたんだよね? 親友から恋の相手に……白雪ちゃんの気持ちが変わったのはバラカスの告白だけがキッカケ? 前から少しはイイナって思ってたとか……?』 『…………ん、前からイイナとか……正直言ってそういう意識はなかったわ。確かにバラカスは男らしくて頭が良くて、口は悪いけど優しいから、素敵なパンダとは思っていたけど、それは恋じゃなかったの。……昨日、す、好きって言われて、すごく驚いた……でも、言われてすぐに意識したんじゃないの。せっかく100年も親友なのに、下手にお付き合いをして、もしも壊れてしまったら、もう親友に戻れないかもって……そっちのほうが怖かった』 『それならどうしてOKしたの? ……もしかして同情とか……?』 『まさか! 同情なんかでOKしないわ! そんなの失礼よ、……ただ……』 『ただ……?』 『バ、バラカスはね、『この100年の俺の気持ちを聞いてくれ』って、明け方までずっと話をしてくれて……そ、それで、その……バラカスって、あの……すごく誠実で……それでいて……』 『それでいて……? なに? なになに? 気になるよ、早く教えて』 『……じょ、じょ、じょ、……情熱的なの。一晩中……好きだって、愛してるって、真剣に言われたら、私、そのドキドキしちゃって……それで、急に気持ちが…………ああ、ちょっと待って、一旦落ち着かせて』 白雪ちゃんはそう言って真っ赤になって、そしてグラスワインを一口飲んで、両手で顔を隠してしまった。 どうしよ、カワイイんだけど……
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