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『…………マーちゃん、』
手で顔を隠したままで、白雪ちゃんがウチを呼ぶ。
大きな肩が微かに震えて、なんだかすごく頼りない。
いつもと違うよ、仕事の時とぜんぜん違う____
____トラブル発生?
____わかりました、すぐに行きます。
____大丈夫、泣かないで。
____あとは私に任せてちょうだい。
頼れる長は、いかなる時も冷静沈着。
決して迷わず、決して動じず、決して感情を乱さない。
トラブルを素早く把握、判断し、正しい決断を下すんだ。
苛立つ事も、誰かを責める事もなく、自分に厳しく霊には優しい。
とてもじゃないけどウチには出来ない。
難しい事なのに、それを100年継続してる。
そんな白雪ちゃんだというのに……
『マーちゃん……わ、私、どうしたらいいのかしら』
今は感情が乱れっぱなしだ。
ウチは視かねて腰を浮かせて手を伸ばし、テーブル越しに白雪ちゃんの頭を撫ぜた……髪、やわらかいなぁ。
しばらくそうしていると、ちょっとだけ落ち着いた白雪ちゃんは、手をどかせて顔を視せてくれたの。
『わ、私、おかしくなっちゃったのかしら……”愛してる” なんて、お母さんはよく言ってくれるけど、他の霊に言われた事はないわ。まして、家族や友達としての愛情じゃなく、その、こ、こ、恋の気持ちでだなんて、』
顔が真っ赤で目がうるうる。
湖の星の明かりに照らされて、それがよくわかってしまう。
『ん……そっかぁ。ねぇ、白雪ちゃん。バラカスにそう言われた時、イヤだった?』
『……ううん、ううん、びっくりしたけど……イヤじゃなかったわ』
『それなら……嬉しかった?』
『……………………うん、』
『そっか、……うん、そっか』
どうしよ……ウチが泣きそうだよ。
白雪ちゃんの純粋さ、それと、今の白雪ちゃんを視たらバラカスがどんなに喜ぶか……そう思うと鼻の奥が痛くなる。
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