第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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白雪ちゃんは ”ふぅ……” と息を吐き、少し霊体(からだ)を前に寄せた。 そして泣き出しそうな小さな声で話してくれたの。 『私……私ね、この100年、バラカスの事は親友だと思ってきたわ。一緒にいると楽しくて、2人が黄泉にいる限り、どちらかが生まれ変わらない限り、この先もずうっと一緒にいられると思ってたの。だからこそ……好きって言われて怖くなった。嬉しかったけど……もし付き合って、もしダメになったら、この先バラカスと会えなくなる、そんなの絶対にイヤだなって……』 『うん……、』 『だけどバラカスは言ったわ。もしも2人が付き合って……それがダメになったとしても、私が嫌だと言わない限り毎日でも会うって。会わないのは俺が耐えられないって……言ったの』 『うん……うん、』 『バラカスは……星を視ながら静かに、ゆっくり……たくさん、本当にたくさん話してくれた。その話のすべてが誠実で優しくて……その……あ、愛情を感じたわ。知らなかった、こんなに想われていたんだ……そう思ったら、顔が熱くなって胸がドキドキして、どうにもならなくなって……夜が明ける頃には私の意識が変わってた』 『うん……うんうん』 『だからといって……この100年ずっと親友だったんだもの、今日からいきなり恋人ですとはなれない。でもね……なれたらいいなぁって、バラカスを好きになりたいなぁって……自然にそう思えたの、』 『うん……うん、うん……!』 『なのに……わ、私、付き合うというコトがよく分からないのよ。バラカスに聞いたらデートをすればいいと言ったわ。でもデートって何をするの? お出かけ? 観劇? デートは毎日するの? それとも週に1度? 仕事が忙しい時はどうしたらいいの? はぁ……情けないわ……そんな事も知らないなんて……だから正直に言ったの。私は恋愛の仕方が分からない、間違うかもしれない、笑われるかもしれない……それでも良い? って』 『うん、うん、うん……!』 『バラカスは……優しいからそれでも良いと言ってくれたわ。それと、私が何をしたって絶対に笑わないとも』 白雪ちゃんはそこまで話すと、両手で顔をパタパタ扇いだ。 ほっぺは変わらず赤いままで、その熱を冷まそうと頑張っている……んだけど、しばらく熱は冷めそうになかった。
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