第六章 霊媒師OJT-2

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一方、そんなユリちゃんの後方では、拳でわかり合おうとする老年幽霊と中年半霊が激しい闘いを続けていた。 『小僧っ! お前も一緒にあの世(むこう)に連れてってやろうか!』 「ふざけんな! 誰が爺さんなんかに負けるかよっ! アンタこそ俺の中に取り込んで、ソウルアーマーにしてやろうか!」 もはや肉眼では追い付けない光速で拳と拳がぶつかり合っている。 儚げに涙を零す少女の背景にしては、すこぶる暑苦しい。 なにもわざわざ喧嘩しなくても、一言「娘さん滅してませんよ」と言えば済む話だってのに。 僕はいい加減2人を終息させたくて社長に声を掛けた。 「社長、ちょっといいですかね?」 「あぁ!?」 瞬間、社長の目線が僕に向いた。 同時、対にいたお父さんがニィっと笑う。 ほんの半瞬。 僅かにできた隙にお父さんの手が社長の両耳を掴んだ。 社長の目が大きく見開く。 『林業なめんなぁぁぁぁああああああああッ!!』 背筋も凍る雄叫び。 林業をなめた事など、いまだかつて1度もない、誓ってない、社長だってそうだろう。 だけどそんな事はおかまいなし。 お父さんは掴んだ耳はそのままに、頭ごと思いっきり下に引っ張った。 そして無情にも90度に曲げ上げられたお父さんの膝が、社長の鼻を捉え潰す。 一瞬で地が赤く染まった。 お父さんは社長の耳を開放すると、口元を三日月に歪ませて薄く笑う。 この不適さ……ラスボス感が半端ない。 だがこの時、今度は勝利を確信したラスボスに隙が生まれた。 そう、自身の強さに油断したのだ。 ラスボスは若き僧兵が事切れたと見誤った。 だがそれは大きな間違いだった。 その鼻をクラッカーよろしく盛大に血を撒き散らし、そのまま惨めに沈むはずだった社長の両手が力強く地を掴んだ。 先程の逆さ腕立ての応用で、天高く振り上げた脚に速度を持って螺旋を描かせる。 空を切った豪脚は凶暴な竜と化しラスボスの顔面に特攻をかけた。
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